世界中の人々の活動を停止させたCOVID−19パンデミック。新しい生活スタイルを模索しながらではあるが、各国、各界が、以前の日常を取り戻すべく前進を始めた。スポーツの世界もその例外ではない。

　ITF（国際テニス連盟）公式サイトが、英国に拠点をおくスポーツ心理療法士のゲイリー・ブルーム氏にインタビューをした。彼は、スポーツ放送局でキャリアをスタートさせ、スポーツ心理療法士に認定後、スポーツ界のエリートアスリートたちをクライアントに持ち、オックスフォード・ユナイテッドFCでスポーツパフォーマンスの心理療法士を務めている。

　パフォーマンスに大きく影響するメンタルヘルス。近年、スポーツにおけるメンタルヘルスに対する意識は高まり改善されてきているとは言え、“精神（メンタル）” と　“健康(ヘルス)”、この２つの別々の単語を一つの言葉にすると、多くの人が身構えてしまうらしい。

「メンタルヘルスには、良いか悪いしかなく、我々が持つのはそのどちらかだと思いがちです。しかし、肉体の健康とのつき合い方と同じです。自分のメンタルとのつき合い方によって変化します」と、ブルーム氏は説明した。
  「テニスプレーヤーに私が尋ねる最初の質問は次のことです。現在の自分の実力は？　２、３年後にはどこにいたいか？　どうやってそこに行くか？」時間の尺度を考慮して目標を決めることができれば、あとは実行するのみである。この目標の設定ができない選手が多いので、その手助けをするのが仕事だと言う。

　そして今は、「このロックダウンから何を学ぶのか？　アスリートとして何を得るのか？　人として何を？」がテーマになってくる。

　ブルーム氏は、待つことしかできない空白の数カ月を失望するアスリートに、メンタルヘルスを理解し、より良いパフォーマンスに導くチャンスだと激励する。「自分のコントロール範囲内だけしかコントロールできないと気づくことが大切」と、秘訣を明かした。

　大会のキャンセルや東京オリンピックの延期は、自分のコントロール可能範囲外のことである。では自分がコントロールできることを考えてみよう。

「ロックダウンによって何ができなくなり、それを改善して乗り越えるためには誰と協力すべきか？　今は何かを上達させる機会か？」この質問を自分に問うことで、そこから今するべきことが見えてくるのだ。