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ラリーの長さで見るナダルの強さの秘訣。ミドルラリーのポイント獲得率で、他の選手を大きく引き離す

スマッシュ編集部

2020.06.10

フォアハンドの逆クロスは、ナダルの代名詞とも呼べる強力なショット。(C)Getty Images

 本来であれば、先週日曜日に予定されていた全仏オープン決勝で、クレーシーズンの盛大なクライマックスを迎えていたはずだが、大会は9月中旬以降へ延期。クレー・キングことラファエル・ナダルの強烈なトップスピンも、素早いフットワークも、目の覚めるカウンターもしばらくお預けとは寂しい限りだ。しかし、そんな今だからこそ、ナダルの強さの秘密を改めて考えてみてはどうだろう。ATP公式サイトでは、ナダルがいかにしてミドルラリーを絶対的な武器としているか、興味深い分析結果を明らかにしている。

 2018年から20試合(ホークアイコート)以上に出場した選手を対象としたデータによると、ナダルが他の選手と一線を画しているのは、5~8ショットのミドルラリーの強さだという。対象の33試合で、5~8ショットラリーでのポイント獲得率は59.7%に達し、55.9%で2位のシュワルツマンを大きく引き離しているのだ。

 なお一般的にテニスのラリーは、①0~4ショット、②5~8ショット、③9ショット以上の3つに分類され、ショット数はボールがコートに入った数をカウントする。

 公式サイトでは「(ナダルが得意とする)5~8ショット、すなわち両選手が3~4ショットを打ち合うミドルラリーは、チェスの盤上の動きによく似た特定のプレーパターンに基づいて行なわれる。1本目はサービスかリターンで、ナダルは通常、相手のバックハンドを狙ったり、リターン後に素早くリカバリーするなど、プレーを続けるチャンスを高めている。続く2本目のショットでは、五分五分の勝負をして、自分に有利になるように"腕相撲"をするのだ」と分析。
 
 続く3本目と4本目、つまりポイントを決するナダルのショットに言及する前に、ラリーを支配するための8つのポイントを紹介。いわく、ボールのコースと深さ、バウンドの高さ、回転、パワー、スタミナ、そしてポジションと時間の8つだ。

「ナダルの3本目のショットは、8つの要素のうち2つ以上を併せ持っている。例えば、彼はデュースコートから、相手が届かない逆クロスへの回り込みフォアハンドを好む。これまで何万回も決めてきたこの得意のショットには、コース、スピン、パワー、ポジションが見事にミックスされている。

 ナダルがチェックメイトに到達するのに4本目のショットが必要な場合、彼はコートの内側に入り込んで相手の時間を奪い、強烈なスピンとコースで相手の逆をつく。ナダルの場合、無理に早くポイントを終わらせようとしたり、逆にラリーを長引かせようとするよりも、これら3本目と4本目のショットの組み合わせでケリをつける方がはるかに有利なのだ」

 実際にラリーの長さ別にナダルのポイント獲得率を見ると、0~4ショットは52.9%(1126/2127)、5~8ショットは59.7%(652/1092)、9ショット以上は55.3%(412/745)と、やはりミドルでの支配力が突出している。

 最初の1、2本目で地ならしを終え、3、4本目で攻撃的なショットを組み合わせる。彼の強さの秘訣は、ここに集約されているようだ。ちなみに、0~4ショットのポイント獲得率トップは、ダニール・メドベージェフ(55.0%)。そして9ショット以上では、日本の西岡良仁(56.6%)が最高のポイント獲得率を叩き出していた。

構成●スマッシュ編集部

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