海外テニス

「ハイハイしていた子どもが歩いていた」元世界6位のシモンが、テニスツアーでの切ない親子関係を明かす

東真奈美

2020.06.17

35歳ながら「調子がすごく良い」というシモン。(C)GettyImages

 世界ランク54位のジル・シモンが、ATP(男子プロテニス協会)公式サイトにブログを公開。自粛期間中の家庭とのふれあいや、今後のテニスとの向き合い方について綴った。

 フランス・ニース出身のシモンは現在35歳。シングルスでの自己最高位は2009年1月に記録した6位で、これまでツアー14勝を数える経験豊かなベテラン選手だ。今年2月のオープン13ではベスト4に進出し、今シーズンを快調に滑り出していた。

 現在は、妻と2人の息子と共にパリに住んでいるが、新型コロナウイルスが拡大し始めた際に家族で南フランスに疎開したという。滞在先の裏庭にはテニスコートがあり、2人の子どもとテニスをする機会が多かったが、子どもたちにとっては、いくら父親がプロテニス選手だろうと、自分のテニスに口出しされるのは好きではないようだ。

「テニスコートで何か教えようとすると、上の子のティモシー(10歳)は、『パパは僕のテニスコーチじゃないでしょ!』って言うんだ。以前からそうだったから、自分もなるべく彼のテニスには関わらないようにしていた。でも時々、父親がプロテニス選手だと思い出すみたいで、その時には嬉しそうにプレーしてくれるよ」と明かした。
 
 ツアー中は家にいられないため、子どもたちの成長の瞬間を見逃すことも多いシモン。ツアー出発前にハイハイをしていた子どもが、帰宅したら歩いていた、なんてこともあったそうで、その度に「ああ、大切なことを見逃してしまった」という気持ちになるそうだ。しかし、今は家にいる時間が持てて幸せだという。

「この数ヵ月間は、そういう点ではとても素晴らしかった。子どもたちと一緒に過ごし、学校のことやその他の雑務的なことも手伝うことができた。とても楽しかったよ」と、今回の自粛期間をシモンはポジティブに活用したようだ。

 一方、自身のトレーニングにはあまり取り組んでいないことも明かした。いつからツアーが始まるのかが不透明な状態ではモチベーションが保てないという。「自分はもう若くない。本格的な練習をずっと続けることはできないんだ。もしそんな事をしたら致命的な怪我をしかねない。だから、休息を十分にとって健康に過ごし、2週間前からゆっくりとトレーニングを始めたばかりだ」。

 残りの選手生命も長くはないであろうシモンだが、今は結果より、試合を楽しむ方が大切だと話す。「テニスが好きで、練習が好きだ。それは永遠に同じだよ。自分は誰よりもテニスを愛しているかもしれない。どんなレベルでも観戦できるし、テニスの全てが面白いと思っている。今は調子もすごく良いから、試合を楽しむことだけに集中したい。結果が出るかはわからないけれど、正しい方法で取り組み続ければ、結果もついてくると信じているよ」。シモンの挑戦はまだまだ続くようだ。

文●東真奈美

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