海外テニス

「今は何が起きても大丈夫」。大坂なおみが揺るぎない自信を持てた理由とは【全米オープンテニス】

内田暁

2020.09.05

ピンチで慌てず、勝てる自信を持てるようになった大坂。(C)Getty Images

 怖いもの知らずの18歳は、上位選手を破ってきた自信に胸を張り、アーサー・アッシュスタジアムへと足を踏み入れた。全米オープンテニス3回戦。挑む相手は、世界9位の真のトッププレーヤー。仮に負けたとしても、失うものは何もない。

 純粋なチャレンジャーの立場に身を置いて、全力でネットを挟む強者へと向かっていく――それが、大坂なおみが3回戦で相対したマルタ・コスチュクの立ち位置であり、同時に、4年前の大坂なおみの立場そのものでもあった。

 4年前……当時18歳だった大坂は、3回戦で世界9位のマディソン・キーズと、アーサー・アッシュスタジアムで相対する。第1セットは競り負けるも第2セットを力でもぎ取り、そして第3セットでは大量リードを奪いながらも、逆転負けを喫し涙する……そんな忘れがたい、悪夢の記憶でもあった。

 もっとも、この日コスチュクと打ち合う大坂には、そのような感傷に浸る余裕は、まったくなかったという。「彼女はすごく良い選手だったから、相手が何歳かなんて考えている暇はなかった」。試合後に大坂は、称賛の意を込め述懐した。
 
 14歳で全豪オープンジュニアを制したコスチュクは、思い切りのよい攻撃が持ち味ではあるものの、本来はボレーやドロップショットなど多彩なショットを操るオールラウンダーだ。だがこの日の彼女は、おそらくは敢えて、緩急を捨てた。ほぼ全てのボールを強打し、セカンドサービスも入れることより、コースやスピードを重視する。

 結果、当然ながらミスは増えた。だが、攻め続けるという信念を胸に抱く彼女のプレーに迷いはない。第1セットはリスクが対価を上回り落とすものの、第2セットでは、ネットにも出る積極性を増したプレーで、大坂にプレッシャーを掛けていく。

 その18歳の豪胆なプレーに、迷いが生まれたのは大坂の方だった。「第2セットの終盤では、ただボールを打ち返して、相手のエラーを待っていた。そんな自分のプレー選択に腹が立ってしまった」

 自身への苛立ちに、タイブレークでは2度大坂のラケットが地面を叩く。第2セットは、18歳の新鋭の手に。さらには第3セットの第4ゲームでも、勢い付くコスチュクは3連続のブレークポイントを手にした。