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海外テニス

大坂なおみ「この2週間で最高」のパフォーマンスを引き出した西岡VSマリーの激戦

内田暁

2020.09.03

自他共に認める完璧なテニスを見せた大坂。(C)GettyImages

自他共に認める完璧なテニスを見せた大坂。(C)GettyImages

 「今日は、自分の試合中の姿勢や態度にすごく満足している」

 アーサー・アッシュスタジアムに、彼女の声が明るく響く。ツアー屈指の強打者であるカミラ・ジョルジ相手に、6-1、6-2のスコアで快勝。大量リードにも集中力を切らさず、一度もブレークを許すことなくゴールまで駆け抜けた、本人も「この2週間で最高」と認める圧巻のパフォーマンスだった。

 確率の高いファーストサービスに、セカンドサービスでの巧みな配球、さらに相手の強打を受け止め無効化する守備力……それら盤石のプレーは全て、「心の有り様」から生まれた物だという。

 そしてこの日の大坂に、「アーサー・アッシュスタジアムで、私も良いプレーがしたい」とのモチベーションを与えた要因の一つに、前日に行われた西岡良仁対アンディ・マリーの一戦があった。

 大坂にとって西岡は、「動きが凄く速く情熱的。見るのが最も好きな選手の一人」である。

 自身がツアーを回り始めたばかりのころ、大坂は西岡のプレーを初めて見た。きっかけは「ニシコリだと思ったら、ニシオカだった」というささやかな勘違いだが、観戦しているうちに小柄なファイターの知的かつ情熱的なプレーに引き込まれる。

 その感動を伝えるべく、大坂がツイッターに「あなたのように速く動けたらな」と書き込むと、西岡が「僕もあなたのように、速いサービスが打ちたいよ」と返す微笑ましいやりとりもあった。
 
 昨日の、4時間30分に及んだ西岡とマリーの熱戦も、大坂は祈るように客席で観戦していた。闘志を顕にし、最後のポイントが決まるその瞬間までボールを追い続けた二人の姿に、大坂は感銘を受けたという。

 ツアーが中断していたこの5ヶ月間、大坂が最も心がけたのは「人間的に成長すること」。そのためにも、「色んな人たちの動向に目を向け、良いと思うところを参考にするようにした」と言った。「どちらも五指に入る好きな選手」だという西岡とマリーの試合を観戦し、そこからポジティブな要素を持ち帰ったのも、そのような姿勢の表出かもしれない。

 人種差別反対の旗幟を鮮明にするなど、今大会の彼女は自分を表現することを恐れず、ゆえに、彼女を取り囲む声は例年以上に騒がしい。

 だが大坂は、「一度コートに足を踏み入れれば、試合のこと以外は頭にない」という。
 コート外の出来事から多くを学び、それらをコート上では純粋なる闘志へと昇華して、2年前の女王は頂点へと続く階段を、一歩ずつ登っていく。

文・構成●内田暁

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