海外テニス

「モヤモヤする負け」の理由は?西岡良仁がトップ選手へと進むための通過儀礼か【全仏テニス】

内田暁

2020.10.02

全仏オープンは2回戦敗退となったが、1回戦ではシード選手から勝利を挙げた西岡。(C)Getty Images

「なんという感情にしたらいいのか、すごく難しいんですが……」
 いつもは、どんな問いにも明瞭に答える西岡が、この時ばかりは言いよどんだ。今大会の結果を、どのように捉えているかと問われた時のこと。

「今大会だけでなく、コロナ期間が開けてから、テニス自体は良かったんです。今日も立ち上がりはあまり良くなかったですが、セカンドからは悪いプレーもそんなになかったので」

 2回戦で西岡が対峙したヒューゴ・ガストンは、ワイルドカード出場の地元フランスの20歳。身長は173センチと小柄だが、厚みある上半身や鍛えられた下半身から繰り出す強打は、迫力がある。加えて、少しでもチャンスがあればドロップショットを打ちまくる、トリッキーな技師でもあった。

 その相手に西岡は、手を焼きつつも、決して圧倒されたわけではない。総獲得ポイント数は、リードを許した第3セット終了時点でも西岡が上回った。手にしたブレークのチャンスは、相手を大きく上回る22回。ただ、実際のブレーク数は5回にとどまり、相手を1つ下回る。

「チャンスは作っているのに取れない。なんかモヤモヤする負けが続いている感じです」。それが、西岡が考えた末に口にした、現時点での「率直な思い」だった。
 
「モヤモヤ」の成分を読み解く時、まずはクレーコートと、今大会のボールの組み合わせを考慮する必要があるだろう。

 特にボールに関しては、例年より「重い」「跳ねない」と多くの選手が声を揃える。西岡の言葉を借りるなら、それは「当たった瞬間、バコっていう感じ」であり、ストリングからの弾きが悪い。一方で、ラケット面との接触時間が長くなるためか、スライスの掛かりは良いとの声もある。ガストンのスライスやドロップが生きたのも、そのような環境面が大きく影響した可能性は高い。
 
 そしてもうひとつ、ツアーの中で確固たる地位を確立しつつある西岡の今の立場が、「モヤモヤ」を醸成している側面もあるはずだ。

 今大会の1回戦で、西岡は第19シードのフェリックス・オジェア-リアシムに完勝した。相手の特性を分析した上で、今回の飛ばないボールは「自分に分がある」と信じて挑んだ一戦でもあった。