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【レジェンドの素顔1】マッケンローが天才的な修正能力を発揮するも第2セットではあらぬミスが…|中編

立原修造

2020.12.07

1982年ウインブルドン決勝。マッケンローとコナーズの戦いは、見えないプレッシャーに苦しむ者と、復活にかける者の思いが交錯した。写真:THE DIGEST写真部

 大一番におけるスーパースターたちの大胆さや小心をのぞいていくシリーズ「素顔のスーパースター」。

 1982年ウインブルドン。マッケンローはボルグとのライバル関係が終焉を迎えようとしており、"今後の彼の時代が訪れるのか"、という点で真価が問われていた。その目に見えない重圧と、痛めた左足首の回復が長引いたことで、万全ではなかったものの、テニスのスタイルが芝の特性とマッチしているからなのか、失セット1で決勝へ進出した。そこに待ち受けていたのは、マッケンローとボルグに栄冠を奪われ、後塵を拝していたジミー・コナーズだった。

  ◆  ◆  ◆

 マッケンローのサービスで、試合は始まった。立て続けにポイントを奪ったのはコナーズだ。15-40から、マッケンローはあっけなくサービス・ダウン。ざわめく観客たち。

 サービスを落とすにしても、落とし方というものがある。長いデュースの末、コナーズのリターンが冴えわたってマッケンローが力尽きるというのならわかる。それなのに、これほどアッサリとマッケンローがブレークされるとは――。

 観客たちは、マッケンローの不安な立ち上がりに驚いた。しかし、さすがにマッケンロー。立ち直るのも早かった。肩が重かったせいで、慎重になりすぎ、ソロリソロリとラケットを振っている自分に気がついた。

「ここまできて、考えすぎてもしょうがない。無心にならなくちゃ」。気持ちの切り替えが、これほどスムーズにできる男も少ない。それこそ、名選手になるための必須条作の一つだろう。
 
 第1セット、マッケンローは一気に5ー3とリードした。第9ゲーム。マッケンローのサービスが冴えわたる。コナーズのリターンはネットにさえ届きはしない。世界一のリターンを誇るといわれているコナーズなのに――。

「たいした男だ」
 コナーズは認めざるを得なかった。この男は訳のわからないところがある。普通の選手なら、調子の波というのは1セット単位で動く。セットの出鼻をくじかれたら、そのままズルズル行くパターンがほとんどだ。しかしペースが悪いとなると、自在に軌道修正してくる。よほどの天才なのか。

 第2セットに入ると、コナーズは、リターンをマッケンローの足もとだけに集中して集めるようにした。一気にパスを狙おうとして何度もネットに直撃させてしまったことを反省したのだ。これは、ペースを変えるのに大きな効果があった。マッケンローにボレーミスが目立ち始めたのだ。

「ボレーで2本決められたとしても、3本のミスを引き出せば俺の勝ちさ」。コナーズのもくろみ通り、ゲームは着実にコナーズのものとなっていった。コナーズはかつてマッケンローのプレーについて、次のように語ったことがある。「ヤツはサービスとボレーだけの男だからね。ストロークはまだまだ未熟さ」