スコットランド出身のテニス選手で元世界１位のアンディー・マリー（イギリス）は、人権問題に関しての意識が高く、積極的に発言している。

　マリーは、2014年から約２年間、元女子テニス世界１位のアメリー・モーレスモ（フランス）をコーチとして起用していた。当時の性差別的な状況を率直に語ったマリーを、ユーロスポーツが取り上げている。

　正式な就任前にメディアに情報が流れたこともあり、ATPツアーの選手仲間や関係者からは、冗談だと思われていた。「メディアとそんなゲームをするとは信じられないね。明日は『犬をコーチとして起用する』と言ってみれば？」と、言う人もいたほどだ。それほど、男子トップ選手が女性にコーチを依頼することは特殊だった。

　スコットランドのナショナルコーチを務めていた母、ジュディさんの手ほどきでテニスを始めたマリーには、他の選手たちからのそんなメッセージに驚き、「女性ツアーコーチと働いたことがなかったので、そんな周囲の反応も初めての経験だった。ネガティブな圧力は最初からかかっていた」と語っている。
  　レジェンドのパット・キャッシュ（オーストラリア）も、「とんでもなく珍しいこと。女性が、ロッカールームに入るのはどうなのだろう。数人の眉は確実に上がるね」と、2014年当時にコメントしている。しかし、「彼女はコーチになる資格はもちろんある。賢いし、素晴らしいテニスをする。アンディは理由もなくコーチを選ぶことはしないと思っている。彼自身、自分の課題をこなしているはずだから、そこに彼女が何かを加えることができれば、素晴らしい選択だと思う」とも述べ、新コンビの動向に注目していた。

　マリーはモーレスモが指導する間に、グランドスラムで優勝はできなかったが、2016年には２位にまで再浮上。しかし、「彼女に、世界ナンバーワンをあげることができなかった」という点は悔いが残っているようだ。

「彼女と一緒に仕事をしていた時に、グランドスラムを獲得できなかったことは、後悔していることの一つだ。多くの人が、そのせいで、彼女をコーチにしたことは失敗だったと考えたが、女性という理由だけで厳しい目でみられていたような気がする」

　マリーは、女性コーチに対して偏見を持つ人々を黙らせるためにも、自分たちのパートナーシップの成功を印象付けたかったのだ。皮肉にも、モーレスモと別れた数カ月後、ウインブルドンで優勝し、その年の後半には世界ナンバーワンに返り咲いた。