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国内テニス

地道なノーギャラ活動から広がった仕事の輪。テニス芸人“ボヨン・ボルグ”が誕生するまで【後編】

内田暁

2020.12.03

加藤未唯とバモス!わたなべが参加した和歌山のイベント。バモス!には笑いを通じてテニスの楽しさを伝えたいという情熱がある。写真:内田暁

加藤未唯とバモス!わたなべが参加した和歌山のイベント。バモス!には笑いを通じてテニスの楽しさを伝えたいという情熱がある。写真:内田暁

 相方と別れ、自身も芸人生活の瀬戸際に立った“バモス!わたなべ”が、テニス芸人として活動しようと思った時、まず考えたのは、著名選手の形態模写をすることだった。ただ彼の頭を悩ませたのが、経費の問題である。

 現役選手はその時々でウェアやラケットが変わり、そうなると、真似する方も買い替えが必要となりお金がかかる。

「だったら、引退したレジェンド選手にすればいい!」
 そう思いつき、ネットで「テニス/レジェンド」と検索した時、真っ先に上がってきたのが、ヘアバンドに長い金髪が印象的なイケメン選手。

 名前の読み方すらよくわからなかったが、「ビジュアルのインパクトもあるし、僕が彼の格好をしたら笑いが取れるのでは」と直感した。もちろんそのレジェンドこそが、ビヨン・ボルグである。

 ただここで立ちはだかる問題が、ボルグが身に付けているラケットやシューズは、今では簡単に手に入らないこと。「白いポロシャツに、手作りラケットでごまかすしかないか」……と途方に暮れつつ下北沢の町を歩いていると、偶然にもテニスショップの前を通りかかる。
 
「こんな所に、こんなお店があったんだ」
そう思い扉をくぐると、なんと入ってすぐの棚に、ボルグ愛用のドネー社のビンテージラケットが展示されているではないか!

「ボルグを知ってるんですか!?」
 思わず勢い込んで店長に尋ねると、返ってきたのは「当たり前じゃないか!」の叱責の声。

 そこで自らの素性と状況を打ち明けると、「わかった、俺に任せてくれ」との心強い言葉を掛けられた。その店長は、ボルグ愛用のものと同じウェアとシューズを見つけ出し、さらにはラケットも「君の情熱はわかったから」と、半額ほどで譲ってくれたという。

 かくして「テニス芸人」を志してからひと月ほどで、“ボヨン・ボルグ”が誕生した。

 そこからのわたなべは、「テニス芸人という自分の存在を知ってもらうため、グランドスラムも含めたテニス大会やイベントなど、自腹・ノーギャラ覚悟で行きまくった」。

 “ボヨン・ボルグ”の公式デビューは、2017年4月に開催された「有明の森スポーツフェスタ」。テニス専門誌『スマッシュ』のブースで手伝いのバイトをしていると、その場で、全国選抜高校テニスの関係者と出会い、同大会の「応援副団長」の肩書を得ることができたのだ。
 

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