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スペイン伝統の正確さに破壊力も併せ持った完成型、J・C・フェレーロの両手バックを見よ!【レジェンドFILE38】<SMASH>

スマッシュ編集部

2021.04.04

ラケットをボールの下に入れてスピンをかけつつ、左手で前への押しも加えたフェレーロのバックハンド。回転量と威力のバランスがとれていた。写真:スマッシュ写真部

 カルロス・モヤに続いてスペインが生んだテニスヒーローが、ホアン・カルロス・フェレーロだ。

 デビュー当初、細身の身体だった彼に付いたニックネームは「モスキート」。それでもフェレーロは、そのアグレッシブなプレーとハンサムな容貌で人気の高い選手となった。身長183センチ、体重73キロのボディサイズは、逞しいとは言えないかもしれないが、スペイン選手の中では均整のとれた肉体で、バランスに長けたストローカーだった。

 モヤはフォアハンドからの攻撃が中心だったが、フェレーロはフォアもバックも、攻撃も守備も、全て柔軟に対応できた。必要ならばネットプレーもソツなくこなす、万能型プレーヤーだった。

 この連続写真は低いボールに対する両手打ちバックハンドだが、このショット一つを取ってみても、彼のレベルの高さがわかる。ボールの回転とスピードの割合を調整する能力がとても高いのだ。
 
 4コマ目のスイング直前でラケットヘッドを落とし、ボールの下に入れているのは、トップスピンの基本通り。ただしこのまま振り上げると回転過多になってしまうので、6コマ目では腕を前にプッシュして、ボールに威力を加えている。まさにお手本のようなスイングだ。

 最新テニスで最も重要なテクニックは「ボールの後ろに入ること」と言われている。横から入ると、押しの少ないスピンボールになりがちだが、後ろからだと回転と推進力を両立できる。それをいち早く体現したのが、フェレーロだったと言えるだろう。

【プロフィール】ホアン・カルロス・フェレーロ/Juan Carlos Ferrero(ESP)
1980年生まれ。ATP最高ランキング1位(2003年9月)。グランドスラム通算1勝(RG:03年)。攻撃的なストロークを武器としたベースラインプレーヤー。歯切れの良いプレーに加え、甘いマスクでも人気を集めた。03年に念願の全仏優勝と世界No.1を達成したが、その後は故障や病気もあり戦績が低迷。現役当時から実業家として活動しており、12年の引退後はホテル経営やテニスアカデミーの運営をしている。17年途中からコーチとしてA・ズベレフの陣営に加わったが、1年未満で関係は終了した。

編集協力●井山夏生 構成●スマッシュ編集部

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