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海外テニス

ウインブルドン史上最年少優勝のベッカーが、34年を経てスキャンダルのデパートに!

レネ・シュタウファー

2019.11.08

1985年のウインブルドンでは大会史上最年少となる17歳7カ月で優勝(写真)。翌年は連覇に成功するなど、若くしてトップスターの座に就いたベッカーだったが(C)Getty Images

1985年のウインブルドンでは大会史上最年少となる17歳7カ月で優勝(写真)。翌年は連覇に成功するなど、若くしてトップスターの座に就いたベッカーだったが(C)Getty Images

 ボリス・ベッカーを初めて見た瞬間を、今でも昨日のことのように鮮明に覚えている。1984年7月、顔にまだあどけなさが残る16歳のボリス少年は、ウインブルドンの1回戦でアメリカのウィレンボルグを6-0、6-0、6-4のストレートで打ち倒した。メイン会場から離れた第13番コートでのゲームだったが、それまで見たことのない野性的なプレーに私は大きな感動を覚えたものだ。そして1年後、彼は史上最も若い優勝者としてウインブルドンを制覇する。

 クラウス・ホーフゼス(当時のドイツ代表チーム監督)は、「フォアハンドを上達させるためなら、ボリスは手段を選ばない。必要とあらば、たとえネズミだろうが食べるはずだ」とベッカーの貪欲さを称えた。ドイツのデ杯優勝は、ドイツスポーツ界の光明となり、国内に一大テニスブームを巻き起こすなど社会現象と化した。

 ウインブルドンで3回、全豪2回、全米1回、そしてデ杯では2回頂点に立った。12週間にわたりランキング1位をキープ。どの試合でも全身全霊のプレーを見せ、最強のハードヒッターとして名を馳せた。
 その全身全霊を込めた生き方は、引退後も続いた。ジッと大人しくなどしていられない性格だから、やることなすことにブレーキが利かず、それゆえマスコミの格好の餌食となり、ゴシップ記事が次から次へと生まれていく。なかでも注目を集めるのが金銭にまつわる報道だ。一文無しになったベッカーが個人破産を防ぐため、詐欺的な行為を働いているとする内容である。

「ロンドンの裁判所で破産手続きをストップするため、ベッカーは身分を偽った。彼は、『自分は2018年4月からアフリカの外交官を務めているので破産の法律を適用されない』と説明している」「その国とは中央アフリカ共和国で、スポーツ・文化・人道問題を担当し、EU(ヨーロッパ連合)に代表団を送っている」と記事は伝えた。

 ベッカーは2017年夏、すでにロンドンで破産が宣告されている。ただし外交官であれば英国の法律に則って罰則を受けることはない。だが名前が上げられた中央アフリカ共和国の外務大臣が「ベッカー氏は、我が国の正式な外交官ではありません。私はそのような人事案に署名したことなどありませんから」と発表し、ベッカーの言い分はすぐさま公式に否定された。さらに数日後、彼が保有する外交旅券が本物でないことが判明。政府の捺印もサインも全て偽造だったのだ――。
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