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海外テニス

日本女子テニスをけん引してきた土居美咲と奈良くるみ。コーチや錦織など、周囲の「助け」を借りてコロナ禍を転戦する2人のサバイバル術<SMASH>

内田暁

2021.04.29

ほとんど日本には帰れず、錦織などの助けも得ながらフロリダを拠点にツアーを転戦する奈良くるみ。(C)Getty Images

ほとんど日本には帰れず、錦織などの助けも得ながらフロリダを拠点にツアーを転戦する奈良くるみ。(C)Getty Images

「今週は落ち着いて、自分のプレーを幅広くできているので、良いテニスができました」
 4月のチャールストン大会(WTA500)で、予選を突破し3回戦まで勝ち上がった奈良くるみは、そう言った。

「今日の試合は、ここ最近で一番良いテニスでした」
 笑顔とともに明言したのは、マドリッドオープン予選決勝で、ダンカ・コヴィニッチ(モンテネグロ)に快勝した土居美咲だ。
 
 土居は、4月29日の誕生日で30歳を迎えた。奈良も、土居と同年生まれの29歳。
 同期の2人はジュニア時代から将来を嘱望され、17歳でプロとしての道を歩み始めた。

 ランキング最高位は、土居が30位で、奈良は32位。いずれもツアータイトルを手にし、勝ち星に見放される苦しい時期も経験しつつ、今も日々新鮮な喜びを感じながらコートに立っている。

 今年1月に、ドバイのITF25,000大会に出場して以来、奈良が日本に帰ったのは「荷物をまとめるための数日間」だけだという。全豪オープン予選に敗れたことで、オーストラリアに入ることはできなくなった。とはいえ帰国すれば、自主隔離等で当面は練習ができなくなる。
 
 そこで渡米し、フロリダを一時的な拠点とした。全米テニス協会(USTA)でチーフトレーナーを務める大地智氏を頼り、充実した環境のなかでトレーニングと練習を積むことができたという。そこからメキシコに渡り2大会に出場すると、再びフロリダに戻り、次の大会に向け調整した。

「大地さんにアレンジしてもらって、すごく良い練習環境を用意していただいたおかげで、今回ここ(チャールストン)で結果を出せたと思います。スケジューリングは難しかったですが、基本はフロリダでずっとお世話になって。(錦織)圭くんにも、お家でトレーニングさせてもらったりと助けてもらいました。色んな人の助けをいただいて、今ここにいる感じです」

 奈良が感謝する周囲の「助け」とは、長いツアー生活の多くの局面で助ける側に身を置き、数々の伝手をつないできたからこそ得られたものだ。下部大会を転戦し、「気持ち的に大変な時期もあった」と認めるが、「結果が出るまで毎日がんばっていこうと思っていたので、それが結果につながったのがすごく嬉しい」と相好を崩す。

「小さなつながりがすごく大切なんだなと、改めて気づかされました。ここ最近は、自分の成長にモチベーションを感じることができています」

 プロ13年目を迎えた、それが奈良の現在地だ。

「自分の成長を楽しみたい」——くしくもと言うべきか、「今の目標」をたずねた時、土居も奈良と同じ言葉を口にした。

 今季の足跡ということで言えば、土居もまた奈良同様に……いや、奈良以上に“ツアー=旅”を生活拠点としている。
 
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