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海外テニス

「チャンスはくると冷静に信じられた」ダニエル太郎が2017年以来の全仏オープン予選を突破!取り組んできたプレーに手応え<SMASH>

内田暁

2021.05.30

環境を一新したダニエル太郎が成長した姿を披露し久々のグランドスラム予選突破!(C)Getty Images

環境を一新したダニエル太郎が成長した姿を披露し久々のグランドスラム予選突破!(C)Getty Images

 相手の打球がラインを越えていくのを見届けると、彼はその場にしゃがみ込み、噛みしめるように拳を固めた。
 
「テニス的に一番好きなグランドスラム」である全仏オープン本戦は、2019年以来の出場。さらに彼を喜ばせたのは、厳しい予選3試合を勝ち抜き、自らの手で切符をつかみ取った事実だ。ダニエル太郎がグランドスラムの予選を突破したのは、2017年のローランギャロス以来のことである。
 
 その予選3試合の勝ち上がりは、一昨年末に「上に行くには、変わらなければ」と環境を一新したダニエルの、成長の足跡そのものだ。
 
 初戦は、39歳のクレー巧者のパオロ・ロレンツィ相手に、雨に良い流れを断ち切られながらも、集中力を切らさず勝利。「今まで勝ったことのない、尊敬している選手」から、冷静ながらも熱い勝利をもぎ取った。硬さがほぐれた2回戦では、実力者のセルジー・スタコフスキーのネットプレーを封じる快勝。ストロークのポジションを高く保ち、機を見てネットにも出る、まさに新生ダニエルのテニスだった。

 本戦出場がかかった3回戦は、最もタフな戦いとなる。クエンティン・ハリスはランキングこそ222位だが、若き日から才能を、フランステニス協会に評されてきたオールラウンダー。鋭いストロークで攻めるハリスに、第1セットのダニエルは終始劣勢に回った。
 
 だが相手のセットポイントを2本しのいで追いつくと、タイブレークのセットポイントでは、「最近で一番かも」と自画自賛のリターンウイナーを叩き込む。流れが二転三転する混戦を制しセット先取したダニエルは、自らが生んだ潮流に飛び乗り、最後まで立ち止まることはなかった。

 この第1セットの逆転劇を、「こころの強さの証明」と称賛したのは、コーチのスベン・グローネフェルトである。心の強さの源泉は、「人間的な成長」だと名伯楽は明言した。

 コーチのその見立てに、ダニエルも「スベンの言う通りだと思います」と全面的に賛同する。「今日の相手は、アップ・ダウンのある選手。リードされても、やるべきことを続けていけばチャンスはくると冷静に信じられた」

 その人間的成長は、自ら考え、コーチたちと相談しながら進むべき方向性を決め、新たにメンタルコーチにも師事する中で培ったもの。さらに最近では、「テニスをゲームとして捉えられるようになった」とダニエルは笑みをこぼした。
 
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