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「深刻に受け止めるべきだ」ドイツの伝説ベッカーが大坂なおみの“引退危機”に警鐘!「私もメディア嫌いだった。それでも…」

THE DIGEST編集部

2021.06.02

「メディアが嫌いだった」というベッカー氏が、悩める大坂にエールとアドバイスを送った。(C)Getty Images

 記者会見ボイコット発言で特大の注目を集めていた大坂なおみが、現地時間5月31日に、『全仏オープンテニス』を棄権すると発表した。

 彼女がボイコットの意思を明らかにしたのは大会前の27日。試合後の会見が選手の精神状態に悪影響を及ぼす可能性を指摘する内容だった。その宣言どおりに大坂は30日に行なわれた1回戦のあと、会見を欠席するに至った。

 これが規定違反として問題視される。大坂は15000ドル(約165万円)の罰金が科せられただけでなく、四大大会(全豪・全仏・ウインブルドン・全米)からの締め出しまで急浮上する事態にまで発展した。

 騒動が深刻化するなか、大坂は自身のツイッターを更新する。「パリでの大会に誰もが集中できるように、大会や他のプレーヤー、そして私自身にとって、身を引くことが最善だと思います」と棄権する旨を公表。さらに「2018年の全米オープン以来、長い間うつ病に悩まされてきて、それに対処するのに本当に苦労しました」と一連の行動に出た背景を告白した。

 23歳の彼女が下した決断には、女子テニス世界ランク8位のセレナ・ウィリアムズが「彼女のやりたいように、最善の方法で対処してもらいたい。彼女はベストを尽くしていると思うわ」とのコメントを寄せるなど、さまざまなアスリートたちが反応。メンタルヘルスの在り方があらためて問われることとなった。

 そのなかで、「彼女は引退の危機にある」とより強い言葉を発信したのが、ドイツテニス界のレジェンドであるボリス・ベッカー氏だ。
 
 1980年代に男子テニス界を席巻し、3度のウインブルドン制覇(85、86、89年)という偉業を成し遂げたベッカーは、自身が解説を務める『EUROSPORT』で、「私は彼女がこういう問題を抱えていると数日前に知った。特に若い女性であれば、深刻に受け止めなければならないことだ」と大坂の想いに理解を示したうえで、持論を展開した。

「彼女は試合に負けた後、メディアと顔を合わせるプレッシャーに対処できなかったと言っていた。マッツ・ビランデル(スウェーデンのレジェンド)と私は、これはこの先もしばしば起こることだと考えている。会見に出るプレッシャーとは、折り合いを付けなければならず、私は仕事の一部だといつも信じてきた。

 ハッキリ言ってしまえば、メディアなしには賞金も出ない、何の契約もなくなるんだ。ケーキの半分は手に入らないよ。現役時代の私も個人的にメディアが嫌いで、記者たちに話すのは好きではなかったが、それはやらなければならなかった」

 さらに「彼女の発言はより深刻に受け止めるべきだ」と警鐘を鳴らすベッカー氏は、こう続ける。

「ナオミは、(メディアへの)対応ができないから大会から棄権すると話した。もし彼女が、パリでメディアに対応できないのであれば、ウインブルドンでも、全米オープンでもできないことになる。この事実が、私にはさらなる疑念を抱かせるんだ。メンタルヘルスの問題のために彼女のキャリアが危機にあると感じている」

 なお、四大大会(全豪・全仏・ウインブルドン・全米)は共同声明で「意味のある改善を行なうつもりでいる」と大坂への支援を約束した。テニス界を揺るがす前代未聞の出来事に対し、波紋は広がり続けている。

構成●THE DIGEST編集部