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ジョコビッチが設立した新選手会“PTPA”は着実に拡大中。「75%以上の選手が一員となることに同意している」<SMASH>

中村光佑

2021.06.03

賛否両論があるPTPAだが、ジョコビッチは組織のアップデートが行なわれ、着実に前進していると自信を見せる。(C)Getty Images

 男子テニス世界ランク1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)が、昨年8月に自ら設立したPTPA(プロテニス選手協会)について、組織のアップデートを行なっていることを明かした。

 PTPAは2020年の全米オープン大会期間中、ATP(男子プロテニス協会)選手評議会を辞任したジョコビッチやバセク・ポスピシル(カナダ)、ジョン・イズナー(アメリカ)などによって、選手の意見をより反映させる目的で設立された。

 だが、この動きをめぐってテニス界ではATPとPTPAの間で分裂が起き、ATP評議会のメンバーであるロジャー・フェデラー(スイス)やラファエル・ナダル(スペイン)も「今は組織を分断すべき時ではない」とその動向を懸念していたほどだ。それでもジョコビッチは「前にも言ったが、PTPAは選手組織として、ATPやWTA、その他スポーツ界のあらゆる団体やその他の機関とテニスのエコシステムの中で共存していく必要がある」と主張している。

 現状PTPAには男子テニス選手のトップ500人のうち、すでに75%の選手が加盟しているという。ジョコビッチは「僕たちPTPAは、男子のシングルスでトップ350、ダブルスでトップ150、そして女子のトップ500に入る全てのプレーヤーに働きかけた」と説明。その上で「PTPAは組織として前進している。今は、いくつかの具体的な計画が進行中だ。これまでのところ、僕が間違っていなければ、75%以上、80%に達する支持を得ていて、彼らはPTPAの一員となることに同意してくれている。女子の方は少しゆっくりしたペースだけどね」と順調に組織改革を進めていることを明かした。
 

 また、「加盟した選手たちは、僕たちが行なう全ての電話会議に参加している。彼らは、僕たちが想像している通り、選手の権利を可能な限り代表する団体となるように、そしてPTPAの構造と基盤を作れるように協力してくれている」ともコメント。一方で「ATPとは何回か話をしたが、PTPAの構造や法律の面で全てが整うまでは、ATPとの交渉を延長する理由はないと思う」とも語り、依然として課題も残っているようだ。

 最後にジョコビッチは「この先2、3か月で何が起こるか見てみよう。しかし、必ずや皆さんにお話しできるような変化やニュースがあるはずだ」とPTPAの健全な運営に自信をのぞかせた。

 ジョコビッチの言葉通り、選手の意見をしっかりと反映させるには多くの組織が協力していくことが求められるだろう。PTPAの設立とその変革がテニス界に変化をもたらすきっかけとなるのか、今後の動向に注目が集まりそうだ。

文●中村光佑

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