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海外テニス

肩の状態が気になる錦織圭。年内に30位以内を目指し全米OPにノーシードで挑む<SMASH>

内田暁

2021.08.29

全米オープン前哨戦であるトロントの大会では、2回戦を肩の痛みのために棄権した錦織圭。(C)Getty Images

全米オープン前哨戦であるトロントの大会では、2回戦を肩の痛みのために棄権した錦織圭。(C)Getty Images

 ランキング55位——。それが、全米オープン開幕を控えた時点で、錦織圭にあたえられた“世界での地位”である。ただこの数字が、真に現在の強さの指標であるかは、慎重に見極める必要があるだろう。

 まずは“ランキング”の算出方法を、「今季の累計獲得ポイント」に置き換えると、錦織の地位は35位へと上がる。また、今季の錦織の戦績は23勝15敗だが、15を数えた黒星のうち、8つはトップ10選手に喫したものだ。

 23の白星のうち、最も高いランキングの選手から手にしたのは、まだ記憶に新しい東京オリンピック初戦での、世界7位の対アンドレイ・ルブレフ。それ以外にも、対戦時13位のダビド・ゴファンや19位のフェリックス・オジェ‐アリアシムなど、トップ30の選手たちからもコンスタントに勝利している。

 ただ一方で、連戦が続くと大会の後半で50~100位の選手に敗れることも珍しくない。つまりは、万全の状態ならトップ20クラスの選手と互角以上に渡り合えるが、連戦を勝ち抜かねばならないテニスツアーのシステムにおいては、獲得ポイントが示す35~55位あたり……それが恐らくは、身体の状態なども含めた、錦織の現在地ということになるだろう。
 
 今回の全米オープンにおいても、気になるのは、前哨戦欠場の理由となった肩の状態だ。肩の炎症は、昨年の終盤にも痛みをおぼえ、ヒジのケガからの完全復活へのタイムテーブルを大幅に遅らせた要因でもある。

 今の錦織にとって何よりももどかしいのは、テニスの状態の良さとケガのリスクのバランスが、どうしてもリスクに傾きがちなことだ。東京オリンピック前には、初夏の欧州シリーズで痛みが出た右手首の状態も良く、フォアハンドを「とにかく振り抜く」ことを意識し、徹底的に打ち込んだ。

 その甲斐あり、「ボールが吸い付いて何も考えなくても入る」「こんなに良い感覚は2年ぶりくらい」というまでの好感触を得ることに成功。久々に手のひらに覚えたその感覚を、薄れる前に刻み込みたいという願いは、当然に強かっただろう。

 オリンピックで単複計7試合を戦いぬいた錦織は、敗戦後すぐに渡米し、ワシントンDC大会に出場。オリンピックで「ベスト4に行けば出ない」予定であり、「疲れもあり、やめたい気持ちもあった」と認めるが、それ以上に「ランキングが思ったより落ちたので、ポイントを稼ぎたい」との渇望が勝る。

「いい試合を重ねることが、今は一番大事。日本で久しぶりにいい感覚を手に入れたので、この感覚をなくさないようにしたい」。多少のジレンマもにじませながら、錦織はワシントンDCでそう言った。
 
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