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海外テニス

元王者ベッカーがジョコビッチを擁護!「ノバクが常に悪者でフェデラーやナダルが常に善者というのは不公平だ」<SMASH>

中村光佑

2021.09.17

ジョコビッチ(写真右)に対する理不尽な評価について、かつての恩師ベッカー(同左)が苦言を呈した。(C)Getty Images

ジョコビッチ(写真右)に対する理不尽な評価について、かつての恩師ベッカー(同左)が苦言を呈した。(C)Getty Images

 男子テニス元世界1位で往年の名テニスプレーヤーとして知られるボリス・ベッカー氏が、欧州スポーツメディア『EUROSPORT』のインタビューに応じ、世界王者のノバク・ジョコビッチ(セルビア/世界ランク1位)が実績と実力に見合った人気を得ていないことに疑問を呈した。

 四大大会で通算20度の優勝、マスターズでも36度の優勝を誇り、長年ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)と共に「BIG3」の一角として世界のトップに君臨しているジョコビッチ。鉄壁のディフェンスと精度の高いストロークを武器に、数々の輝かしい功績を残しており、世界1位の通算在位期間も338週に達した。

 しかし、その圧倒的な強さゆえに会場のテニスファンがジョコビッチの対戦相手を応援するケースが多く見られる。プレースタイルの面でもジョコビッチは度々フェデラーやナダルと比較され、「華やかさがない」と厳しい評価を受けてきたことも周知の事実だ。さらに、新型コロナ禍で開催したエキジビション大会『アドリア・ツアー』でのクラスター発生や2020年の全米オープンでの失格と言ったセンセーショナルな出来事も火に油を注ぐ事態となった。

 そんな中でジョコビッチは「年間グランドスラム」を懸け、現地9月12日の全米オープン決勝でダニール・メドベージェフ(ロシア/2位)と対戦。ところが、偉業達成のプレッシャーからか序盤から調子が上がらずにミスを連発し、安定したプレーを披露するメドベージェフに終始苦戦。まさかのストレート負けを喫し、グランドスラムでの連勝記録も27でストップしてしまった。
 
 敗れたジョコビッチは表彰式のスピーチで「勝つことはできませんでしたが僕の心は喜びに満ち溢れています。皆さんのおかげで特別な瞬間を迎えることができました」と会場のファンへ感謝の言葉を述べたが、その目には涙を浮かべていた。

 ジョコビッチのコーチを務めたこともあるベッカー氏は、失意に暮れるかつての愛弟子が見せた涙に心を打たれたようだ。「あれは非常に困難な状況の中での、率直で正直な素晴らしい言葉だった」と評した上で、「ノバクがテニスコートで泣いているところは見たことがない。彼は感情的に本当に限界まで、あるいは限界を超えてしまったのだろう」と大きな重圧にさらされていたジョコビッチを気遣った。

 また、34歳の世界王者の人間性についても「私はノバクをプライベートでもプロテニスプレーヤーとしても知っているが、彼は素晴らしい人だとしか言えない」と主張。

「ノバクが常に悪者で、ロジャー(フェデラー)とラファ(ナダル)が常に善者というのは、不公平だと思う。メディアを含めた一般の人々は、選手としても個人としても素晴らしい資質を持った2人(フェデラー・ナダル)だけではなく、3人のレジェンドがいるという事実を知らないといけない。ニューヨーク(全米)での2週間、決勝戦、その後のスピーチ、そしてニューヨークの観客の反応によって、彼が最終的に異なる見方をされるようになることを願っている」

 フェデラーとナダルの存在に加え世界王者という立場も関係しているのか、比較的ジョコビッチは悪い面ばかりがピックアップされる傾向がある。だが、ジョコビッチに限らず人間誰しも一長一短があるものだ。良い面にもしっかりと目を向けることが大切なのではないだろうか。

文●中村光佑


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