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【テニスギア講座】プロが履くテニスシューズは市販品と違うのか?その格差社会を覗いてみる<SMASH>

松尾高司

2021.09.26

プロが履くシューズが市販品と同じかどうかはケースバイケース。ただウインブルドンでは、選手は使用シューズメーカーから特別なソールを装備したモデルを渡される。写真:THE DIGEST写真部

 プロ選手が履くテニスシューズは、一般の市販品とは違うのでしょうか?テニスショップ店頭では"プロが使用するのと同じモデルです!"という表記も見られますが、実際にはそうでない場合もあります。今回はその真相に迫ってみましょう。

 皆さんはショップなどでシューズを購入して履かれますが、プロの場合は少々事情が違います。プロはそのランキングによって、かなり明確な「サポートの格差」があるのです。

 まず下から見ていくと「シューズの提供のみ」というランクがあり、数から見れば、これが大半と言えるでしょう。その中でも、年間の供給数などの格差があります。上位になるほど供給数は多くなり、ソールの摩耗が少ない状態で試合に臨めますが、少ないと、1週間のトーナメントを1足で賄わなければならない選手もいます。ここまでは「市販品をそのまま提供」が当たり前で、カスタマイズが必要な選手は自分で行ないます。

 ところがツアー上位選手になると、2試合に1足、あるいは全ての試合を新品シューズで戦えたりもします。さらに、シューズの供給だけでなく「使用に伴う契約金」が支払われる選手もいます。

 もっと待遇がいいと、自分の足型を取り、それに合わせて専用シューズを作ってもらえるという「究極のフィッティング」が提供されます。また、市販品とは違う特別カラーの専用モデルが製作されることも!

 もちろんメーカーによっては、全ての選手に市販品のみを提供するケースもあれば、それほど上位でなくても契約で特別モデルを作ることもあります。こうした格差が存在するシビアな世界が「プロテニス」なのです。
 
 シューズの供給に関して、ちょっと面白い話があるので紹介しましょう。ウインブルドンでは、プロたちはスペシャル仕様のシューズを履きます。これは完全に市販品とは違っていて、基本的に市販されることのないモデルです。

 まずアッパーは「ほぼ白色」がウインブルドンから義務付けられています。これも特別製ですが、完璧に違うのは「ソールとソールパターン」です。ウインブルドンでは、美しい天然芝をできるだけ最後まで守るため(もちろんバウンド環境を維持するためでもある)、芝を削り取ってしまうようなソールの使用を禁止しており、その規制は時代を追うごとに厳しくなっています。

 規定は細部まで及び、ソールはラバー製で、ピンプル(スタッド状のイボイボ)の太さや高さ、一定面積当たりの配置密度、配置可能範囲、ラバーの硬度などなど、実に細かく明確な縛りがあります。メーカーはこれに則って特別バージョンを作り、それを大会90日前までにウインブルドンへ送って検閲を受けなければならないのです。

 もしウインブルドンをテレビ観戦していて、シューズの裏面が映ったら、よく見てくださいね。

文●松尾高司(KAI project)
※『スマッシュ』2019年8月号より抜粋・再編集

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