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【全日本選手権】20歳の新鋭、齋藤惠佑がシード撃破でブレークの予感。「プロとの差」を詰めたコロナ禍でのトレーニング<SMASH>

内田暁

2021.11.02

第2シードの関口周一に競り勝った齋藤惠佑。フィジカルが強くなり、武器であるフォアが長丁場でも生かせるようになった。写真提供:齋藤宣孝(関西テニス協会)

 まだジュニアのような初々しさが、幼さの残る面差しと、思い切りのよいプレーに宿る。

 2時間24分の試合中に、危機は幾度もあった。第1セットを落とし、第2セットのタイブレークでは1-5と敗戦まで2ポイントに追い詰められる。ファイナルセットのタイブレークでも、序盤のダブルフォールトで自らを窮状に追いやった。

 それでもプロ2年生の20歳は、「体力的にもテニス的にも良い。チャンスはある」と言い聞かせ、左腕から繰り出すフォアの強打で道を切り開く。

「相手はミスが少ない選手。攻めなくてはダメだ」

 そう自らを鼓舞し続けた齋藤惠佑が、全日本選手権で第2シードの関口周一から殊勲の白星をもぎ取った。

 齋藤の名が、テニス界に広く知れ渡ったのは3年前。大阪市開催の、世界スーパージュニア選手権を制した時だ。2019年には、4大大会すべてのグランドスラムJr.にも出場。翌2020年に、プロの世界への門をくぐった。
 
 ただその直後にテニス界は、新型コロナ感染拡大による停止の時に突入する。特にアジアの大会は、欧州のテニス界が再始動しても動きがない。ITF大会に設けられていた、元トップジュニア選手への特別出場枠も消滅する。実戦経験を積むことは、困難な状況に陥った。
 
 ただその事態を齋藤は、前向きに捉えた。

「まだ色んな面でプロとは差があった。練習できたので、僕にとっては良かったと思います」

 彼が感じていた「プロとの差」とは、第一に、フィジカル面。さらには、「走らされるとミスが多かった」という弱点を克服するため、振り回しの練習も多くこなした。

 その成果は関口との試合中にも、感じることができたという。

「プロになってから、一番くらいに長い試合」だったが、最後まで集中力も攻めの姿勢も途切れなかった。フィジカルに自信がつけば、自信を持つフォアの威力も継続できる。そんな齋藤の成長を、関口も「2年前に対戦した時より、全体的にレベルが上がっている」と肌身で感じていた。

 30歳を迎えた関口は、齋藤を「このレベルのプレーが続けられれば、もっと上に行ける選手」だとも評する。それは換言すれば、継続できてこそ初めて、本物と認められるということだろう。

 この勝利の真価が問われるのは、ここからだ。

取材・文●内田暁

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