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【伊達公子】18歳から伸び悩む日本テニス界。世界で戦うために求められるジュニア期のコーチ像は?<SMASH>

伊達公子

2021.11.05

コーチの小浦さんが引いたレールに乗っていたという伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 選手がコーチに求めるものは、成長過程で変わっていきます。ただし、子どもの時は近所でテニスを始めて、そこでコーチと出会います。その人が良いコーチなのか、物足りないコーチかを考える発想自体がないでしょう。

 もし子どもがプロテニス選手を目指すことを意識し始めた時にはコーチとご両親で、今後どうありたいのか、何を目指すのか、何が子どもにとって最適なのかをしっかりと話し合う時間を持つことが大切だと思います。

 では、プロを目指すジュニアにとって、良いコーチとはどんなコーチでしょうか?

 必要な技術を一通り教えてくれるのは絶対条件です。ある程度年齢が上がると、技術習得には時間がかかるので、ジュニア期に最高の成績を残すことだけでなく、吸収できる年齢までに全てのショットを教えるという概念を持ったコーチが必要です。

 世界への道を示してくれることも大事です。私の場合は、コーチの小浦(武志)さんがかなりレールを引いていました。色々なことを説明してくるのですが、当時は理解していませんでした。それが後々、「ああこういうことか」とわかるわけです。私はレールの上に乗っていたわけで、恵まれた環境だったと思います。

 小浦さんはジュニアの時から世界基準で指導してくれました。目先の結果には囚われず、世界に行ってどうするかという基準で教わったことは、後々生きてきたことです。今の時代、それはもっと必要になってきています。
 
 今までの傾向を見ていると、日本人選手は18歳までは強いですが、それから伸び悩みがちです。すごく難しい課題ですが、フィジカル面での差が大きく出てくるのが18歳以降だと考えると、将来どういう体格や筋力になるだろうかと、将来をイメージしたテニスをジュニア時代から構築していくという発想が必要だと思います。

 海外の場合は、背がいずれ高くなるから今はショットの確率が多少悪くても構わないという考え方をします。たとえば日本の場合だと、小柄な体格で戦うことを想定して、ショートラリーで1発でエースを取れるテニスで戦うスタイルよりもフットワークや予測を鍛えておくというような考え方をしておいた方がいいでしょう。

 日本の場合は、雑誌も含めてフォーム重視の傾向にあります。しかし、一番大事なのは生きたボールに力負けしないで、自分のテニスを作り上げられるかです。テニスの試合では常に自分が主導権を握るパーフェクトな展開にはなりません。劣勢な状態から、自分のテニスに持ち込める方法を身に付けておく必要があります。

 試合内容だけのことではありません。苦しい状態を挽回するという考えがないと、プロになって行き詰った時に、挫折して終わってしまいます。ハングリーさがあると、苦境も乗り越えられます。

 もしプロを目指すのであれば、全ショットを教える考えがあり、将来を見据えた指導をしてくれるコーチを選ぶといいでしょう。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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