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中国選手失踪をめぐるATPの静観姿勢に世界2位のメドベージェフは一定の理解。「何か別の考えがあるのだろう」<SMASH>

中村光佑

2021.12.04

情報が不明確な中、ATPが慎重な姿勢を見せることに、メドベージェフは一定の理解を示す。しかし一方で、自身が中国ですぐプレーするのは「気が気でない」とも。(C)Getty Images

 世界規模の問題へと発展しているペン・シューアイ(中国/元ダブルス世界ランク1位)の失踪騒動を受けて、12月1日にWTA(女子テニス協会)はツアーに多大な利益をもたらしていた中国国内での全トーナメントを中止するという重大な決断を下した。これには男子テニス世界王者のノバク・ジョコビッチ(セルビア)をはじめ、男女問わず多くの選手が支持する姿勢を示している。

 その後、同じく中国で4つのツアー大会を開催しているATP(男子プロテニス協会)も公式声明で「ペン・シューアイの状況は、我々のスポーツの内外で深刻な懸念を引き起こし続けている。この一件に対する対応は、これまでのところ不十分だ」とのコメントを発表。ところがWTAのように中国での大会中止は表明せず、現状では「この問題の進展を見守っていきたいと思う」と述べるにとどめた。

 WTAとは対照的なATPの姿勢にSNS上では「選手の安全を考えていない」「WTAを見習った方がいい」などと批判の声が殺到している。そんな中、男子世界2位のダニール・メドベージェフ(ロシア)は「僕らがはっきりさせたいのは、彼女が安全であるということだが、それについて100%はわかっていない」とペンの安否を懸念しつつも、「ATPを非難するつもりはない」と語った。
 
 その理由について「何をすべきかは、さまざまな意見があると思う。全て異なる視点から見ることができる。(ATP会長の)アンドレア・ガウデンツィ氏にも何か別の考えがあるのだろうし、自分は誰が良いとか悪いとか言いたくないんだ」とコメント。さらに、「自分がもし来週中国でプレーするとしたら、それは気が気ではない」とした一方で、以下のように続けた。

「今後の展開を見守るしかない。それに多くの国が政治的な問題を抱えているけど、そういったほとんどの国でトーナメントは行われている。(ATPの)次の中国での大会は1年近く先だから、時間が経てば全てが進展し、ペンに何が起こっているのかを詳しく知ることができると思う」

 なお、現在メドベージェフは2年ぶりの開催となった男子テニス国別対抗戦「デビスカップ・ファイナルズ2021」に出場中。メドベージェフ擁するロシアテニス連盟はベスト4に進んでいる。

文●中村光佑

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