国内テニス

インカレ室内で成長著しい田口涼太郎が初の日本一!今後の進路については「まだまだテニスを続けたい」<SMASH>

内田暁

2021.12.05

第1シードの白石光に決勝で勝利して優勝を果たした田口涼太郎(近大)。写真提供:全日本学生テニス連盟

「確実に、彼ですね」。今大会第1シードの白石光が、「ここ数年で最も伸びた選手」として名を挙げた存在——、それが「彼」こと、田口涼太郎だ。白石と田口は、小学生時代から大会会場で顔を合わせてきた同期の友人。ただ、常に同世代のトップランナーだった白石に対し、田口はシングルスでの"日本一"とは無縁だった。

 高校卒業後の進路も、田口が一番に望んだのは早稲田大学だったが願いは叶わず。一方、高校卒業後のプロ転向も囁かれた白石は、周囲の予想に反し早稲田大学へと進む。

「打倒、早稲田!」。近畿大学に進学した日から、田口の情熱はその一点に注がれた。

 近畿大学の校風は、自主性を重んじることだという。コートやジムなどの施設は充実している一方で、生徒への強制力は極めて低い。

 つまりは良くも悪くも、その環境をどう使うかは自分次第。そのなかで「自分で自分を追い込める方」だという田口は、1年生時から自らの課題に取り組んだ。

「パワーがなくて、フォアで全然決められなかった」という弱点を克服するため、トレーニングで上半身を徹底強化。テニス部専属のメンタルコーチにも師事し、「たとえ失敗しても、トライしたことは無駄にはならない」との思考回路も脳に焼き付けてきた。

 結果、白石が認める急成長を遂げた田口は、今年8月の全日本学生テニス選手権(インカレ)で、かつて自身の遥か先を行ったその友人に勝利。自信を獲得し駆け上がった今大会の決勝戦では、白石との頂上決戦を迎えていた。
 
 白石にとってはインカレ時のリベンジを、田口にとっては「打倒早稲田」の悲願成就を胸に期した一戦は、両者が歩んできた足跡を映すかのような展開となる。

 第1セットは、体力を削り合うようなストローク戦とブレークを繰り返すなか、最後は白石が抜け出し先取。

「白石君に勢いを与えたくない。先にセットを取りたい」と思っていた田口にとっては、落胆を隠せぬビハインドだ。

 ただ取った白石にとっても、決して手ごたえを得ながらのリードではなかったという。「涼太郎は常に攻めてくるので、ストローク戦でプレッシャーを覚えていた」。その精神的な圧迫感が、第2セットではスコアに反映される。

「トライしたことは無駄にならない」の信念を胸に抱く田口は、劣勢に追いやられても常に、攻守逆転の一手を狙い続けた。自信を深めているサービスでは、布石を打ちつつ重要な局面で相手の裏をかいてみせる。スコアほどに一方的な展開ではないが、第2セットは田口が6―1で奪回した。
 
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