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海外テニス

土居美咲が苦しい状況を乗り越えて開幕戦で4強と好発進!「変な話、負けてもしょうがない」<SMASH>

内田暁

2022.01.10

準々決勝では21歳の新星を冷静な試合運びで下した土居美咲。(C)Getty Images

準々決勝では21歳の新星を冷静な試合運びで下した土居美咲。(C)Getty Images

 土居美咲が、今季開幕戦のアデレード・インターナショナル1(WTA500)で、ベスト4の好発進。誰もが緊張と高揚感を抱きつつ手探りで挑む新たなシーズンで、確かな足跡をオーストラリアの地に刻んだ。

 いずれも勝負強さを発揮し手にした今大会の勝利の中でも、最も価値あるのは、準々決勝のそれだろう。相手は、第2シードのサバレンカを破った新鋭、カヤ・ユバン(スロベニア)。まだ粗さもあるが、小気味よいストロークがひとたびリズムを捉えると、一気に加速する怖い選手だ。

 その相手の出鼻をくじくように、第1セットを手堅く奪ったのは土居。だが、第2セットは速い展開に勝るユバンが取り、第3セットも勢いのままに21歳がブレークで先行した。

 それでも土居は、「冷静だった」と振り返る。相手のプレーが、ゲームを重ねるごとに上がってきているのは感じていた。だからこそ一打ごとに状況を判断し、無理せず返すボールと、攻めるべき局面を見極める。第3セットは2度ブレークで先行されるも、その都度、直後のゲームで追いついた。

 第12ゲームでは、2度の相手マッチポイントの窮状に追い込まれるも、この局面でも土居は、理詰めの組み立てでオープンスペースを作り、自慢の左腕を打ち抜きウイナーを奪ってみせる。その痺れるプレーの背景にあったのは、「相手のプレーも良いし、変な話、負けてもしょうがないなという気持ち」が生んだ「良いメンタリティ」だった。
 
 この試合を振り返り、土居は幾度か「できることは限られている」との言葉を口にした。

「実は」と前置きして明かしたのは、オーストラリアへと発つ数日前にぎっくり腰に見舞われて、十分な練習ができなかったという事実だ。

 だが今の土居は、そのような逆境を冷静に受け入れ、プラスに転化する術を持つ。年齢はあくまで数字とわかりつつ触れるが、ジュニア時代から世界で活躍してきた土居も、昨年4月で30歳を迎えた。そこに至る路程では、ランキング300位台にまで落ち、ドサ周りを繰り返すつらい時期も乗り越えてきた。

 最近では、かつての自身と似た苦しみを抱える後輩選手に、「私は色々と乗り越えて、今は楽しいよ」と助言したとも聞く。今大会のベスト4は、それら踏破してきた経験の集積だ。

 今大会のベスト4を「良いスタート」と捉えるも、過度に喜ぶこともないのは、勝利も敗北も日常とするツアープロの性質が、身に沁みついているからだろう。

 その日常の中から、試合同様に攻めるべき機を見極めて、上位進出の時を淡々と狙っている。

文●内田暁

【PHOTO土居美咲ら2021年全豪オープンに挑んだ日本人選手たち
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