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「2年で結果が出なかったら引退」全豪オープン初戦敗退の西岡良仁を悩ます“負のスパイラル”<SMASH>

内田暁

2022.01.19

全豪オープンの初戦敗退後に行なわれた記者会見で西岡良仁が苦しい胸の内を明かした。(C)Getty Images

「僕はあと、2年だと思っています」

 彼がさらりとそう言った時、言葉の真意を、とっさには測りかねた。ただ彼はそのあとも、よどみなく続けていく。

「ランキングが落ち続けたら、やる気がなくなってしまうと思う。この2年間で結果が出なかったら、僕、たぶん引退すると思うので」

 語る声色は平板で、極めて無機質に乾いて響く。その冷静さが逆説的に、西岡良仁が抱える心の痛みを、深くえぐるようだった。

 全豪オープン初戦のコートに立つ西岡は、ブレークの好スタートにも関わらず、迷いと苛立ちを抱えていた。必ずしも、プレーが悪い訳ではない。だが、彼の中で何かが噛み合っていないのは、ポイント間の表情や、動向を見ても明らかだ。

 ファーストサーブをネットにかけては、「なんでや!」と叫ぶ。ショットをネットにかけるたび、不安げな表情で、兄やコーチたちが座る一角に顔を向ける。

 2セットを失い、それでも徐々にリターンのタイミングをつかみ第3セットは取り返すも、試合の流れを変えるには至らなかった。

「昨年の終盤から、良いプレーができていない。その理由がわからない。勝ててもいないので自信がない」

 試合後の会見で、西岡は苦しい胸の内を隠すことなく履きだした。
 
 彼が「良いプレーができていない」と感じ始めたのは、昨年の夏のこと。右手首を痛め、自信を持つバックハンドを、思うように打てなくなったのが主因だった。

 もっともその頃はまだ、「ケガが治れば、また勝てる」と信じていた。ただ、勝利に見放され試合数も少なくなるなかで、自分でも気づかぬうちに「勝てるビジョンが描けない」状態に陥っていたという。

 ケガが癒え、年末年始の練習では、決してプレーは悪くないと感じていた。そのことは、コーチである兄の靖雄も「練習では良いんです」と裏書きする。ただいざ試合になると、「ミスするイメージ」を頭から打ち消すことができない。それは、知略を最大の武器に戦う西岡にとり、何より苦しいことだった。
 
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ツアーの厳しさを知る西岡だからこその思いとは…