「僕はあと、2年だと思っています」
彼がさらりとそう言った時、言葉の真意を、とっさには測りかねた。ただ彼はそのあとも、よどみなく続けていく。
「ランキングが落ち続けたら、やる気がなくなってしまうと思う。この2年間で結果が出なかったら、僕、たぶん引退すると思うので」
語る声色は平板で、極めて無機質に乾いて響く。その冷静さが逆説的に、西岡良仁が抱える心の痛みを、深くえぐるようだった。
全豪オープン初戦のコートに立つ西岡は、ブレークの好スタートにも関わらず、迷いと苛立ちを抱えていた。必ずしも、プレーが悪い訳ではない。だが、彼の中で何かが噛み合っていないのは、ポイント間の表情や、動向を見ても明らかだ。
ファーストサーブをネットにかけては、「なんでや!」と叫ぶ。ショットをネットにかけるたび、不安げな表情で、兄やコーチたちが座る一角に顔を向ける。
2セットを失い、それでも徐々にリターンのタイミングをつかみ第3セットは取り返すも、試合の流れを変えるには至らなかった。
「昨年の終盤から、良いプレーができていない。その理由がわからない。勝ててもいないので自信がない」
試合後の会見で、西岡は苦しい胸の内を隠すことなく履きだした。
彼が「良いプレーができていない」と感じ始めたのは、昨年の夏のこと。右手首を痛め、自信を持つバックハンドを、思うように打てなくなったのが主因だった。
もっともその頃はまだ、「ケガが治れば、また勝てる」と信じていた。ただ、勝利に見放され試合数も少なくなるなかで、自分でも気づかぬうちに「勝てるビジョンが描けない」状態に陥っていたという。
ケガが癒え、年末年始の練習では、決してプレーは悪くないと感じていた。そのことは、コーチである兄の靖雄も「練習では良いんです」と裏書きする。ただいざ試合になると、「ミスするイメージ」を頭から打ち消すことができない。それは、知略を最大の武器に戦う西岡にとり、何より苦しいことだった。
彼がさらりとそう言った時、言葉の真意を、とっさには測りかねた。ただ彼はそのあとも、よどみなく続けていく。
「ランキングが落ち続けたら、やる気がなくなってしまうと思う。この2年間で結果が出なかったら、僕、たぶん引退すると思うので」
語る声色は平板で、極めて無機質に乾いて響く。その冷静さが逆説的に、西岡良仁が抱える心の痛みを、深くえぐるようだった。
全豪オープン初戦のコートに立つ西岡は、ブレークの好スタートにも関わらず、迷いと苛立ちを抱えていた。必ずしも、プレーが悪い訳ではない。だが、彼の中で何かが噛み合っていないのは、ポイント間の表情や、動向を見ても明らかだ。
ファーストサーブをネットにかけては、「なんでや!」と叫ぶ。ショットをネットにかけるたび、不安げな表情で、兄やコーチたちが座る一角に顔を向ける。
2セットを失い、それでも徐々にリターンのタイミングをつかみ第3セットは取り返すも、試合の流れを変えるには至らなかった。
「昨年の終盤から、良いプレーができていない。その理由がわからない。勝ててもいないので自信がない」
試合後の会見で、西岡は苦しい胸の内を隠すことなく履きだした。
彼が「良いプレーができていない」と感じ始めたのは、昨年の夏のこと。右手首を痛め、自信を持つバックハンドを、思うように打てなくなったのが主因だった。
もっともその頃はまだ、「ケガが治れば、また勝てる」と信じていた。ただ、勝利に見放され試合数も少なくなるなかで、自分でも気づかぬうちに「勝てるビジョンが描けない」状態に陥っていたという。
ケガが癒え、年末年始の練習では、決してプレーは悪くないと感じていた。そのことは、コーチである兄の靖雄も「練習では良いんです」と裏書きする。ただいざ試合になると、「ミスするイメージ」を頭から打ち消すことができない。それは、知略を最大の武器に戦う西岡にとり、何より苦しいことだった。