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国内テニス

プロへの思いを固めるために――筑波大3年の阿部宏美が初めての単身海外遠征で優勝した意味<SMASH>

内田暁

2022.02.24

エジプトのITFツアー15,000ドルで初タイトルを手にした阿部宏美。これまでの迷いが嘘のように、プロの世界に飛び込むことを「楽しみです!」と言い切った。写真:本人提供

エジプトのITFツアー15,000ドルで初タイトルを手にした阿部宏美。これまでの迷いが嘘のように、プロの世界に飛び込むことを「楽しみです!」と言い切った。写真:本人提供

 プロになるのか、それとも、テニスは大学までなのか――?

 これまで、何度も聞かれてきただろうその問いを改めて尋ねた時、彼女はいつもの控え目な……ただ彼女にしては、比較的歯切れの良い口調で言った。

「だいたいは。1か月はエジプトの15,000ドルの大会に出て、その後フランスに行って、それで確定させようと思っています」

 言葉の主は、大学テニスであらゆるタイトルを手に入れた、筑波大3年生の阿部宏美。その彼女がプロ転向を前提として現在、初の単身海外遠征に出ている。それも、まずは「調整くらい」の気持ちで出た最初の大会でいきなり優勝。自身の覚悟と実力を見定めるための旅で、これ以上ないスタートを切った。

 大学2年生時にインカレで単複優勝を果たした阿部だが、3年生の1年間は、迷いのなかにいたと明かす。

「テニスを続けるか悩んでいた一番の理由は、テニスが楽しくなかった。もっとやりたいと思えてないのが、3年生の時だった。その状況でテニスを選ぶのは難しいなと思っていた」

 楽しいと感じられなかったのは、本人いわく「大げさに言うと、伸び悩んでいた」から。

「バックハンドがずっと調子が悪くて、それが直らなくて、嫌だなと思ってて。それでも進路を決めなくちゃいけないから、プロの賞金大会にも出て、結構結果は良かった。けれど、逆にそれが……勝っても別に変わらない。逆にテニスを続けていくのがきついなと感じて。部活も休んで、去年の10月、11月は普通に就活してました」
 
 この時の就職活動の内容次第では、もしかしたら、彼女の選ぶ道は違うものになっていたかもしれない。ただここからの3か月間で、彼女は3つの転機に遭遇する。

 1つ目は、就活の面接だった。面接に行けば当然のように、会話は学生時代の活動、そしてテニスへと至る。その時、1人の面接官が、雑談のような軽い口調で、こう尋ねてきた。

「口では、プロは無理かもしれないからと言ってるけれど、どうなの? 僕には、そう感じてないように思えるけれど」

 見透かされた……、思わずそう感じて、ドキリとする。この時の面接が、本当は何をしたいのかと、改めて自分に問いかける機会となった。

 2つ目は、年明け早々に参加した、ユニバシアード大会の練習会。

「その時に、ユニバ日本代表の細木(祐子)監督に教えてもらったことを練習していたら、先が見えたし、久しぶりに楽しかった。もう少し続けてみたいなと思ったんです」。

 テニス継続に心が傾いたそのタイミングで、背を押してくれたのが、亜細亜大学の山崎郁美からの「一緒に2月に、エジプト遠征行かない?」の一言。もしかしたら、重さを含まぬ友人からの軽快な誘いも、彼女の背を押す要因だったかもしれない。

「軽い感じだったけれど、私もそのノリに身を任せよう、今だと思って。声を掛けられなかったら、エジプトに行くことはなかったと思います」
 
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