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国内テニス

プロへの思いを固めるために――筑波大3年の阿部宏美が初めての単身海外遠征で優勝した意味<SMASH>

内田暁

2022.02.24

2020年のインカレに続き、21年にはインカレ室内も制して学生ランキング1位となった阿部。しかし一時期はテニスから離れる気でいた。写真提供:全日本学生テニス連盟

2020年のインカレに続き、21年にはインカレ室内も制して学生ランキング1位となった阿部。しかし一時期はテニスから離れる気でいた。写真提供:全日本学生テニス連盟

 慌ただしく決まった遠征予定は、実際にパスポートやクレジットカードなどの事前準備が間に合わず、予定より1週間遅れたうえに、阿部の先行単身出発にもなった。

 それでも、これまで二の足を踏んでいた海外遠征にも、阿部は繰り出す。この時点で、実質的に心は決まっていたのだろう。

 エジプトへの一人旅は、異国の「怖さ」との戦いだったと、今は笑顔で振り返る。

 カイロでの乗り継ぎの際に、国内線の乗り場がわからずうろうろしていると、奪うようにカバンを手にして運んでは、チップを要求してくる人がいる。挙げ句には「タクシーに乗らないと無理だ」と車に押し込むように乗らされ、数分の乗車で40ドルも取られもした。

 何とか会場に着いた後の最初の2日間は、「1日1時間半の練習以外、ずっとホテルにこもっていた」とも苦笑いする。

 初戦で苦戦したのは、そのような状況下で「練習不足だった」ため。2回戦以降も、強風やコートコンディション、そして日本人選手とは異なる海外選手たちのプレーに戸惑いを覚えもした。

 それでも、相手に応じて戦い方を変えられる阿部の持ち味が、この場面でも生きたという。「自分から相手にミスをさせようと、スライスや浅いボールも使って戦いました」。その臨機応変なプレーで、結果的に5つの白星を連ねた。
 
 完璧主義者な阿部は、結果にかかわらず、常に自己評価が辛い。その彼女が、今大会に関して次のように自己採点する。

「どんな形であれ、優勝まで行けたのはうれしい。このコンディションの悪い状況全て込みで…‥ろく、ご、ろくじゅ…いや、50点くらいかな」

 60からのダウングレードはいかにも彼女らしいが、50点にしても、彼女にしてはかなり高い自己評価だ。

 今回、久々の国際大会に身を置き実感じたのが、欧米勢の「ボールの強さと、攻めの早さ」だという。

「前に出られる時にはパッと入って、打ち込んでくる。15,000ドルのレベルだからか、ミスする選手も多いけれど、根本的に攻める姿勢が日本人よりある。攻撃的だなと感じました」

 そのような「攻撃的なテニス」との対戦は、「ミスしない」を第一義とする大学テニスに閉塞感を覚えていた彼女に、テニスの楽しみを思い出させもしたようだ。

 プロとして、攻撃的な選手も多い雑多なテニスの世界に飛び込むのは、楽しみ?――
「楽しみです!」
 返ってきたのは、迷いなき明るい声だった。

文●内田暁
 

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