ロシア軍からの侵攻を少しでも食い止めようと、予備役としてウクライナ軍に入隊した元世界ランク31位のセルゲイ・スタコフスキ氏（ウクライナ）が、ノバク・ジョコビッチ（セルビア）から受けた支援の影響と、戦地でのリアルな現状について明かしている。

　海外メディア『ユーロスポーツ』によると、最近のビデオインタビューに応じたスタコフスキ氏は、SNSで寄せられるテニス選手たちからのメッセージが「ウクライナ人の精神を強くしてくれている」と語る。また、中でもジョコビッチからのメッセージは特別なものだったようだ。

　スタコフスキ氏は先日、ジョコビッチからWhatsApp（無料のメッセージアプリ）を通して「スタコ（スタコフスキ氏の愛称）、元気かい？　早くすべてが落ち着くことを願っている。資金援助でも他の方法でも、どんなサポートでも必要であれば知らせてほしい」とメッセージを受け取ったことを明かしていた。

　これについて改めて問われたスタコフスキ氏は、「彼も若いころに地獄（コソボ紛争）を経験した。地下鉄の駅で生活しているウクライナの子どもたちの現状を完全に理解している。『誰にも経験させたくないことだ』とね」として、少年時代に空爆の音に恐怖しながら長い地下生活を送った経験を持つジョコビッチからの支援が、ウクライナ人にとって、「とても意味のあるもの」だと語った。
  　現在36歳のスタコフスキ氏は、妻と３人の幼い子どもをハンガリーに残して母国に戻った。それは１月の全豪オープンでテニスツアーを引退してからわずか１か月半後のことだった。ラケットを銃に持ち替えて、敵国からの侵攻に備える日々について「まさか故郷の町で、手作りのベストを着て銃を手にパトロールするなんて、想像もしていなかった」と思いを吐露する。

「戦争が始まる５日前に、アメリカやイギリスの情報機関が『ロシアの侵攻してくる』と言っていたが、100％ありえないと確信していた。（侵攻が始まった後の）最初の２、３日でさえ、まだ希望を持っていて、悪い夢だと思っていた。でも16日目ともなると、それは通用しない。この状況に慣れて、自分の国が生き残るための方法を見つけなければいけないんだ」

　テニス界では、スタコフスキ氏へのメッセージ以外にも、アンディー・マリー（イギリス）による寄付をはじめとした様々な形の支援がウクライナへと送られている。これらのサポートが、一人でも多くの人の命を救ってくれるよう願わずにはいられない。

構成●スマッシュ編集部