海外テニス

20歳のシフィオンテクが世界ランク2位へ!さらなる躍進を導いた重要な決断は「コーチを変えたこと」【シリーズ/ターニングポイント】

内田暁

2022.03.23

クレバーなテニスで存在感を放つ元全仏覇者のシフィオンテクだが、昨年12月の新コーチ招聘でさらに強さがアップデートされた。(C)Getty Images

「やはりローランギャロスだろうけれど、それではあまりに、わかりやすいので……」

 彼女はそう言い小さく笑うと、少しの間、虚空を見つめた。

 それは会見などで話すとき、彼女がよく見せるしぐさ。質問の意図を咀嚼し、自分の考えを構築すると、一息に理路整然と話していく。その間わずか、1~2秒。入力した情報を瞬時に処理して答えをはじき出すかのようなプロセスが、理知的な彼女のプレースタイルとも重なる。
 
「あなたのキャリアにターニングポイントがあるとしたら、それはいつですか?」

 冒頭で触れたのは、この問いへのリアクションだ。

 優勝したローランギャロス(=全仏オープン)は一旦脇に置き、そのうえで、彼女は続けた。

「重要な決断ということでいうのなら、コーチを変えたことだと思う。一緒に取り組み始めたオフシーズンから、彼はいろいろなことを教えてくれた。伸ばせるところ、改善すべき点、新たに足すべきことも」

 その「コーチ」とは誰のことか、念のために確認する。

「英語だと、トーマス・ビクトロフスキーという発音になるのかな? 今のコーチよ」

 やはり、そうだった。イガ・シフィオンテクが、第2のターニングポイントとして言及したのは、昨年12月の出来事だった。
 

 シフィオンテクが、5年間過ごした前コーチとの決別をソーシャルメディアで発表したのは、昨年12月上旬のこと。「この決定は挑戦であり、とても難しい判断でした」と記した。

「新コーチにはビクトロフスキーが就任」と各メディアが報じたのは、数日後。ビクトロフスキーは、ポーランド史上最高選手の呼び声高い、アグニエスカ・ラドワンスカの元コーチだ。
 
 その「重要な決断」を彼女が下してから、まだ4カ月も経っていない。転換期になりえる時としては、最近すぎるようにも思えた。

 ただ、改めてシフィオンテクの足跡を見たときに、ふと思う。あまりに成熟した物腰に忘れそうになるが、彼女はまだ20歳。つい2年前には高校の卒業試験に追われ、大学進学も視野に入れていたニューフェースだ。若い彼女にとって3か月半は、キャリアが劇的に変わるのに十分な時間なのだろう。
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新コーチはシフィオンテクの良き理解者となった