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国内テニス

伊達公子のジュニア育成キャンプで垣間見た“コーチ・錦織圭”の熱さ「自分と打つことでプロの球を感じてほしい」<SMASH>

内田暁

2022.04.26

沖縄のキャンプには、錦織、伊達という日本テニス界が有する最高峰の人材が揃い、情熱的な指導が行なわれた。写真:内田暁

沖縄のキャンプには、錦織、伊達という日本テニス界が有する最高峰の人材が揃い、情熱的な指導が行なわれた。写真:内田暁

「あれ? 意外に気付かれないな……」

 マスクにキャップ姿の彼は、コートサイドをしばし歩くと、恥ずかしそうに笑みをこぼした。

「はい、走ってー!」

 ややわざとらしいまでに声を張ると、視線を向けた数人の選手から、「え、マジで!?」「ヤバイヤバイ!」と、驚嘆と歓喜の大声が上がった。

 4月18日から22日にかけて、沖縄県で行なわれた『リポビタン Presents 伊達公子×YONEX PROJECT』(以下伊達プロジェクト)育成テニスキャンプ。そのコート上に、錦織圭が現れた瞬間だ。

 1月末に股関節の手術を受け、今夏のツアー復帰を目指しリハビリ中の錦織が、沖縄合宿を訪問したのは本人の希望だったという。

「自分と打つことでプロの球を感じてほしい。自分もジュニアの時に、プロの方と打ったことは、今でも鮮明に記憶に残っている。それをジュニアの人に体感してほしいかなというのもあります」

 そのような思いもあり、錦織が自ら提案して実現した臨時コーチ就任だった。その訪問を、選手たちに事前通達しないのは、伊達さんたっての要望だったという。
 
「今回、彼(錦織)が来てくれるのが、選手のモチベーションになるのは明らかでした。ただそこに頼り切らず、キャンプにどんな覚悟で一人ひとりが取り組むのかも見ておきたかった」

 選手たちに隠していたのは、単なるサプライズには留まらない、伊達さんならではの“選手見極め”の狙いがあった。
 
 錦織が登場したのは、5日間のキャンプの3日目のことである。沖縄の激しい日差しに肌を焼かれ、厳しいフィジカルトレーニングを重ねたなかで、疲れもピークに差し掛かる頃合いだ。

 その最中に出現した錦織は、合宿参加選手たちのやる気を掻き立てるかっこうの起爆剤となる。実際、錦織が来て以来、選手たちの目が輝き、目に見えて動きに鋭さが増した。これぞ、戦略家として知られた伊達さんの狙い通り……といったところだろう。

「自分と打つことでプロの球を感じてほしい」という錦織の願いも、早々に実現する。彼がキャンプに現れて最初にしたのは、7人全員と3分ずつ打ち合うこと。その3分の濃密さは、ボールを打つ手を通じて選手たちに直に伝わる。

「3分がすっごく短く感じた!」「でも超疲れたよね!」「ボール速すぎ」「重いし」

 錦織と打ち終えた選手たちが、顔を輝かせ声を弾ませた。

「自分が課題としているのが、バウンドしてから伸びるボール。錦織さんのショットはめっちゃ伸びてきて、憧れの球だって思いました」

 興奮気味にそう語ったのは、15歳の網田永遠希。友人たち曰く「サバサバした性格」で、マイペースな佇まいの網田は、ミニゲームで単複ともに錦織に勝利し、「錦織キラー」の異名を取った。
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