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海外テニス

「足に注射を打って神経を麻痺」させた状態で優勝したナダル。今後は足の問題の解決か引退か<SMASH>

中村光佑

2022.06.06

勝利の瞬間に涙を流していたナダル。極限状態の中で手にした14度目の全仏優勝だった。(C)Getty Images

勝利の瞬間に涙を流していたナダル。極限状態の中で手にした14度目の全仏優勝だった。(C)Getty Images

 テニス四大大会「全仏オープン」は大会最終日の現地6月5日に男子シングルス決勝を実施。第5シードのラファエル・ナダル(スペイン/世界ランク5位)が第8シードのキャスパー・ルード(ノルウェー/同8位)を6-3、6-3、6-0のストレートで下し、同大会2年ぶり14回目となる優勝を果たした。

 クレーシーズンに入る直前に肋骨の疲労骨折が判明し、約1か月半にわたって戦線離脱を強いられたナダル。前哨戦での優勝がないまま迎えた今回の全仏では苦しみながらも何とか勝ち上がり、ルードとの決勝では圧巻のプレーを披露して14度目の頂点に立った。

 この結果グランドスラムでの優勝回数も22に更新。興奮冷めやらぬ中で行なわれた記者会見でナダルは「この2週間は驚くことばかりで、とても感動的だった」と厳しい戦いの連続であった今大会を振り返った。

 2005年ごろから左足の慢性疾患を抱えていることで知られるナダルは、決勝2日前の記者会見で「新しい左足と引き換えなら決勝で負けてもいい。新しい足があれば日常生活で幸せになれるだろう」と率直な気持ちを語り、依然としてフィジカル面でのコンディションが万全でないことを明かしていた。それだけに各方面で「今年が最後の全仏になるのではないか」「全仏を最後に引退してしまうのではないか」との懸念の声も上がっていたほどだ。
 
 実際のところナダルは今回の全仏でも「足に注射を打って神経を麻痺させ、痛みを感じないようにしていた。抗炎症剤もずっと服用していて、極限状態の中で戦っていた」と言う。それでも36歳の偉大なるレジェンドは「足が万全ではない状態で競技を続けられないのは明らかだ」としつつも、今後も可能な限りプレーを続ける意欲を示した。

「僕は仕事を続け、足に起きていることの解決策と改善策を見つけるために努力する。僕たちはチームで何が起こっていて、どんな可能性(改善方法)があるのかについて、たくさん話し合ってきたんだ。足に衝撃を与えてしまう2つの神経を眠らせることができることを知った。その感覚を永続的に作り出せるような治療を試みることはできる」

 その一方でナダルは「自分のテニスキャリアは、自分の人生の全ての期間において優先されてきた。でもそれは人生の幸福よりも優先されたことはない。もし、今あるものでテニスをすることに幸せを感じることができるのであれば、これからも続けていくつもりだ。でももしそれができないのであれば、他のことをするつもりだ」ともコメント。場合によっては現役引退を決断する可能性があることも示唆した。

 どんなに強い選手であってもケガに耐えることは容易ではない。すでに大ベテランの域に達しているナダルもそう考えているようだ。もちろんファンとしてはまだまだ元気にプレーする姿を見たいところだが、とにかく日常生活に支障が出ることのないよう、決して無理はしないでもらいたいものだ。

文●中村光佑

【連続写真】ヒジ主導でテイクバックしてパワーを生み出す、ナダルのフォアハンド
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