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【テニスギア講座】テニスボールが黄色いのはどうして? 伝統よりも大切なのはテレビ放映<SMASH>

松尾高司

2022.06.26

今でこそ「テニスボールは黄色いもの」だが、かつては白が一般的だった。1970年代から約15年かかって、国際大会の公式使用球は全て黄色となった。写真:スマッシュ写真部

今でこそ「テニスボールは黄色いもの」だが、かつては白が一般的だった。1970年代から約15年かかって、国際大会の公式使用球は全て黄色となった。写真:スマッシュ写真部

 テニスのバイブル漫画『エースをねらえ!』の第一作アニメ主題歌に「わたしは飛ぼう 白いボールになって」というフレーズがあります。「何それ?」と思う方もいるでしょうが、1980年代以前は、テニスボールは白いものでした。

 でもそれが黄色になるという国際的な動きが出てきます。全豪が70年に黄色いボールを採用したのを皮切りに、72年には当時の国際ローンテニス連盟が「テニスボールは白かオプティックイエロー(蛍光黄)」と定めてから、黄色ボールの波が世界に広まったのです。

 最後まで白を貫いてきたウインブルドンも、ついに86年に黄色を採用。そこには非常に大きな理由がありました。

 キッカケは「カラーテレビの普及」です。世界で初めてテニス大会がテレビ中継されたのは、1937年のウインブルドンでしたが、その頃はまだ白黒テレビでしたから、緑の芝は黒っぽく見え、白いボールがくっきりと映えました。

 ところが60年代にカラーテレビが登場すると事情が一変。67年からウインブルドンでもカラー放送が始まり、白いボールは見えにくいという声が高まります。当時の放送は画面の解像度が低く、ブラウン管に映る選手の姿はボケ気味、ボールはにじみ、速い打球は軌跡を追えませんでした。

 国際ローンテニス連盟の調査でも、テレビでは白より黄色が見やすいと結論され、全世界の公式戦で使われるボールが黄色になったという事情です。
 
 ではなぜ「黄色」だったのか? それには諸説あり、まずは「クレー汚れ説」。白いボールはクレーで汚れると同じ色になって見にくくなりますが、黄色は汚れの影響を受けにくいという理由です。様々な色を試してみた結果と思われます。

 次に挙げられるのが「膨張色と収縮色説」で、赤は膨張色のため認識するのが早くなり、早いタイミングでスイングを始めてしまうから。「赤信号」はこの理由で選ばれたといいます。

 逆に青は収縮色で、実際より小さく見えるために振り遅れる傾向があるらしい。その結果、中間である黄色が、ボールとの距離を最も正確に把握しやすいとされました(緑も視認性が高いがコートの色と被ることが多いのでNG)。

 似た説に「屈折率説」があり、赤は屈折率が小さく、目の中で早く像を結ぶため認識しやすいが、青は屈折率が大きく、目の中で像を結ぶのが遅くなるので振り遅れる。だから黄色がちょうどいいという説で、いずれもプレーヤーの視認性に注目したものですが、どうもテレビ放映での視認性が主原因のようです。

 そう考えると、現代のテレビ環境は、ワイドになったためコート全面がカバーでき、表示レスポンスが高くて、実にクッキリした映像でボールを追えます。本当に幸せな時代と言えますね。

文●松尾高司(KAI project)
※『スマッシュ』2020年10月号より抜粋・再編集

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