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【伊達公子】男子で試合中のオフコートコーチングが開始。成功例を見せてほしい<SMASH>

伊達公子

2022.08.05

「女子ではオンコートコーチングで成功しているシーンをあまり見かけません」と言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 ウインブルドン後の大会から男子の試合で、試合中のオフコートコーチングを試験的に取り入れることになりました。これには正直、驚きました。女子のテニスツアー大会ではオンコートコーチングが行なわれていますが、男子の場合はコーチに依存せずに自己解決型が多いと思っていたので、まさかの変更です。

 ただ、男子の場合は座っている場所からの声掛けが許されるという内容で、女子のようにベンチに行って話をするわけではありません。今までも少なからずコーチたちはガッツポーズなどのジェスチャーで気持ちを伝えていたわけですから、その範囲が広くなるという程度の変化の可能性もあります。

 今後は言葉もかけていいので、その点は楽しみです。コーチが試合の分析をして、そのアドバイスを選手が冷静に受け止めて、戦法を変えてガラッと流れが変わるとか。そういう状況になるのは見てみたいですね。
 
 女子ではオンコートコーチングで成功しているシーンをあまり見かけません。自分の状況が悪い時に呼ぶことがほとんどで、感情的になっていることも多々あるため、多くの場合コーチから一方的に話されたりで、冷静な会話になりません。私もそうでした(笑)。

 ダブルスの方がコーチングが効果的に機能していました。選手はシングルスの時ほど感情的になりませんし、パートナーもいるので言い合いになりづらいです。加えて、ダブルスは展開が速く、外からでしか見えない部分もあります。「もっとロブを使える」「ダウンザラインにスペースがある」など、俯瞰的に見えた内容を伝えられることで、ポイントにつながることもあります。

 男子の場合は特に、試合中のコーチングは席からの数単語の声掛けぐらいでちょうどいいのではないかと思います。このルールを活用することで、どのような変化が生まれるのかは、まだわかりません。面白くなる可能性はありますし、ぜひとも男子で試合中のコーチングの成功例を見せてほしいです。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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