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【伊達公子】試合中のコーチングのメリットとデメリット。観戦をより面白いものにする<SMASH>

伊達公子

2022.08.12

試合中のコーチングでは「メンタルのサポートが大きな割合を占める」と言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 男子テニスの大会で試合中のコーチングが試験的に始まっています。女子のようにベンチに行くオンコートコーチングではなく、数単語の声掛けやジェスチャーによるオフコートコーチングですが、面白い取り組みだと思います。

 うまく活用できた場合、選手がするべきことが再確認でき、方向性が定まり、迷いがなくなるという効果が期待できます。劣勢の時に何かを変えようとすると、その変更に自信が持てない時もあるものです。そんな時に後押ししてもらえると、やることが明確になり、気持ちもポジティブになるでしょう。

 逆に悪い方向に出る可能性もあります。自分の考えとピタッと合えば問題ありませんが、考えがズレていた場合、どちらの方向でいくべきか迷いが出ることもあります。アドバイスをどのように選択していくのかは、今後選手に求められる要素になっていくでしょう。

 テニスはメンタルが大きく左右するスポーツなので、試合中のコーチングはある程度メンタルのサポートが大きな割合を占めるのではないかと思います。良い精神状態だと、結果的に選手自身が良い判断ができます。試合中にどうしても波はありますから、ダウンしている時に上げてもらえるような声掛けがあるとプラスに働きます。
 
 うまくいかなくてイライラしている場合など、声掛けが切っ掛けで怒りが収まる場合もあるかもしれません。女子の場合でもコーチとベンチで口論になっても、その後に冷静になれるということはありました。このルールによって選手が物に当たる回数が減るのなら、意外なプラスの副産物です。

 試合中のコーチングは観戦をより面白くしてくれるでしょう。普段、選手とコーチがどんなコミュニケーションを取っているのか、こういう場面ではどういうアドバイスをするのかなどを垣間見られます。

 また、戦術を知った上で選手のプレーが見られるので、プレー内容にも注目しやすいでしょう。これからはポイント間もコーチの言葉やジェスチャーに注目していくことになるので、見逃さずに試合全部を楽しんでください。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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