テニスラケットには「グロメット」が装着されています。フレームにはストリング(ガット)を通す孔が開けられていますが、そこに挿し込まれているのがグロメットです。
現代ではほぼ全てが「連続グロメット」「グロメットストリップ」なる構造で、フレーム外周のガットが通るルートにベルト状で装備されます。しかし、そもそもグロメットとは脚の長い「ハトメ」のようなもので、孔に単独で挿し込まれていました。これを「ピングロメット」と呼ぶこともあります。
グロメットの役割は、ストリング孔の鋭角な角によって糸が傷付くのを防ぐことです。ラケットがウッド製だった頃には不要でしたが、金属製フレームの登場によって必須パーツとなりました。また、カーボン製フレームのストリング孔も金属製同様にドリルで開けられて鋭い角ができるため、グロメットによってガットを保護します。
最初は単独だったグロメットは、やがて1本のベルト状につながれて連続グロメットになりました。こうすることで単独グロメットの「抜け落ちやすい」という問題は解消され、製造工場ではグロメット1本ずつを挿し込む細かい手作業が簡略化されることになり、ほとんどのラケットがこれを採用することになりました。
今日のフレームの構造・製法において、グロメットは絶対に必要な存在です。グロメット同士をつなぐだけでなく、カーボンフレームとガットとの間にあって、ガットを保護するという基本的な役割の他に、このストリップで振動・衝撃や打感をコントロールするなどの付加的機能も担います。
グロメットが打球性能に大きく貢献した例が、バボラの「ウーファーシステム」です。丸く盛り上がった樹脂形状によって、打球時に「圧縮→復元」し、打感をマイルドにしながら、トランポリンのバネのような役目を果たして反発性能を高めます。さらに丸く滑らかなルートにより糸が動きやすいため、連続的に挙動するという効果が生まれました。
グロメットは絶対に必要と言いましたが、中には超例外もあります。プリンスの「O3」は両サイドとトップ部にグロメットがなく、フレームのカーボンが直接ガットを支えます。この構造は糸の可動域を広げ、反発性能を向上させる効果があり、グロメットありタイプと共存ラインナップされています。
今日のグロメットストリップは、ストリングパターンやフレーム構造の違いで、そのラケット専用の物が作られています。グロメットは破損することもあり、ガットが切れる原因ともなるため、交換が必要となります。ほとんどの交換用グロメットはトップバンパーとセットで販売されており、大体2,000円以上と意外に高価です。
でも仕方ありません。実はグロメットストリップを製造するための「金型」は極めて高価なのです。フレームに隙間なくセットするには高い精度が要求され、フレーム本体用の金型よりも高価な場合もあります。ラケットにとってグロメットは非常に重要なパーツですから、もし破損した時は専門店で交換してもらいましょう。
文●松尾高司(KAI project)
※『スマッシュ』2020年12月号より抜粋・再編集
【PHOTO】フェイスがゆがみ、ストリングがたわむ! 3/1000秒のインパクトの瞬間
現代ではほぼ全てが「連続グロメット」「グロメットストリップ」なる構造で、フレーム外周のガットが通るルートにベルト状で装備されます。しかし、そもそもグロメットとは脚の長い「ハトメ」のようなもので、孔に単独で挿し込まれていました。これを「ピングロメット」と呼ぶこともあります。
グロメットの役割は、ストリング孔の鋭角な角によって糸が傷付くのを防ぐことです。ラケットがウッド製だった頃には不要でしたが、金属製フレームの登場によって必須パーツとなりました。また、カーボン製フレームのストリング孔も金属製同様にドリルで開けられて鋭い角ができるため、グロメットによってガットを保護します。
最初は単独だったグロメットは、やがて1本のベルト状につながれて連続グロメットになりました。こうすることで単独グロメットの「抜け落ちやすい」という問題は解消され、製造工場ではグロメット1本ずつを挿し込む細かい手作業が簡略化されることになり、ほとんどのラケットがこれを採用することになりました。
今日のフレームの構造・製法において、グロメットは絶対に必要な存在です。グロメット同士をつなぐだけでなく、カーボンフレームとガットとの間にあって、ガットを保護するという基本的な役割の他に、このストリップで振動・衝撃や打感をコントロールするなどの付加的機能も担います。
グロメットが打球性能に大きく貢献した例が、バボラの「ウーファーシステム」です。丸く盛り上がった樹脂形状によって、打球時に「圧縮→復元」し、打感をマイルドにしながら、トランポリンのバネのような役目を果たして反発性能を高めます。さらに丸く滑らかなルートにより糸が動きやすいため、連続的に挙動するという効果が生まれました。
グロメットは絶対に必要と言いましたが、中には超例外もあります。プリンスの「O3」は両サイドとトップ部にグロメットがなく、フレームのカーボンが直接ガットを支えます。この構造は糸の可動域を広げ、反発性能を向上させる効果があり、グロメットありタイプと共存ラインナップされています。
今日のグロメットストリップは、ストリングパターンやフレーム構造の違いで、そのラケット専用の物が作られています。グロメットは破損することもあり、ガットが切れる原因ともなるため、交換が必要となります。ほとんどの交換用グロメットはトップバンパーとセットで販売されており、大体2,000円以上と意外に高価です。
でも仕方ありません。実はグロメットストリップを製造するための「金型」は極めて高価なのです。フレームに隙間なくセットするには高い精度が要求され、フレーム本体用の金型よりも高価な場合もあります。ラケットにとってグロメットは非常に重要なパーツですから、もし破損した時は専門店で交換してもらいましょう。
文●松尾高司(KAI project)
※『スマッシュ』2020年12月号より抜粋・再編集
【PHOTO】フェイスがゆがみ、ストリングがたわむ! 3/1000秒のインパクトの瞬間