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海外テニス

「覚えておきたかったの」初戦敗退後に写真撮影した大坂なおみ。会見室でも心ここにあらず<SMASH>

内田暁

2022.09.01

全米OPで1回戦敗退となった大坂なおみの心境は、本人のみぞ知るか。(C)Getty Images

全米OPで1回戦敗退となった大坂なおみの心境は、本人のみぞ知るか。(C)Getty Images

 会見室に座る彼女の表情から、感情は読み取りにくかった。

 過去に幾度かあった敗戦後のように、目に見えた落胆や失意の影はない。かといって、何かしら収穫を得たという、達成感や満足感をにじませるわけでもない。

 本人も、自らの感情をどう扱っていいのか戸惑っている……そのような風情は、テニスコート上の彼女の姿とも重なるものがあった。

 大会前に「初戦の相手はタフなので不安」とこぼしていた大坂だが、試合立ち上がりのプレーは、迫力に満ちていた。

 まずは、サーブが走っていた。相手の浅いリターンを迷わず叩く、フォアの強打も威力がある。ワイドへのエースで第1ゲームを締めくくると、続くゲームを即ブレーク。第3ゲームはエース2本にサーブウイナー2本を決め、ラブゲームで3ゲーム連取。第19シードのダニエル・コリンズ相手に、強い大坂が戻ってきたかに思われた。
 
 だが、「恐れを知らぬファイター」の通り名を持つコリンズは、この程度では揺らがない。過去3戦全敗の雪辱を果たすため、「十分になおみの情報を集めてきた」とも彼女は言う。その対大坂の基本戦術は、「リターンでバリエーションをつけること」。特に大坂のセカンドサーブを、迷わず全力で叩いた。

 大坂の球威にもひるまぬコリンズの決意は、もつれ込んだ第1セットのタイブレークで、一層鋭利さを増す。ベースライン上に刺さる大坂の強打を、下がらずむしろ踏み込んで、腰を落とし跳ね際を捉える。打ち合うたびに時間を削り取られる大坂は、心地よくボールを打たせてもらえない。第一セットは、コリンズの手に。

「フォアでの自信を失ってしまった」と後に明かす大坂は、第2セットでは主導権を掌握するチャンスがありながらも、1本が欲しい局面でミスが出た。

 象徴的だったのは、第2セットの第7ゲーム。相手の2本のダブルフォールトを生かせず2度のブレークチャンスを逃すと、続くサービスゲームでは、セカンドサーブをことごとく叩かれブレークを許す。結果的に最後となったゲームでも、2本のブレークポイントを物にできない。最終スコアは、5-7、3-6。

 コリンズとの握手を終え自分のベンチに戻った大坂は、スマートフォンを取り出すと観客席にカメラを向け、写真を撮ったようだった。
 
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