海外テニス

【雑草プロの世界転戦記5】夏のヨーロッパ各国で開催される「クラブリーグ」。会員だけでなくプロも参加して盛り上がる<SMASH>

市川誠一郎

2022.09.14

クラブリーグはヨーロッパの夏の風物詩となっている。左上は市川選手がプレーするクラブのメンバーたちと。写真提供:市川誠一郎

 25歳でテニスを始め、32歳でプロになった市川誠一郎選手は、夢を追って海外のITF大会に挑み続ける。雑草プレーヤーが知られざる下部ツアーの実情を綴る転戦記。

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 ヨーロッパの選手にとって、夏はクレーコートシーズンです。ヨーロッパ本土で多数の大会が開催され、ITFツアーレベルに身を置く選手の多くは、ヨーロッパでプレーします。

 同時にヨーロッパの夏は、各国で「クラブリーグ」が開催されます。クラブリーグの上のカテゴリーでは、テニスクラブが試合のために選手を雇っており、特にITFツアーで戦うヨーロッパ選手にとっては、クラブと契約することが数少ない収入源になっています。

 こうしたリーグは基本的に週末に開催され、コートを見渡せるクラブハウスの素敵なカフェや芝生のベンチで、クラブ会員さんたちがお酒を飲みながら試合を観戦しています。これがヨーロッパのテニスクラブの文化です。

 クラブリーグは幾つものカテゴリーに分かれており、1つのクラブがたくさんのチームを持っていたりします。プロ選手を雇うトップチームから、会員さんがプレーするシニアやジュニアなど、どのレベルの選手もクラブリーグをプレーするのです。
 
 ドイツのクラブリーグは特に規模が大きく、一般だけでも10を超えるカテゴリーに分かれるほど巨大なリーグです。

 ヨーロッパ全体に言えることですが、こちらでは田舎の小さな町にもテニスクラブがあり、大抵のクラブがチームを作ってリーグに参戦しています。

 どの町にもテニスクラブがある――これがクラブリーグという文化を生む土壌になっているのです。

 大多数のクラブは会員さんたちの中の腕利きが試合に出るのですが、強いチームになってくると国際大会を回る選手が数人いたり、さらに上のリーグを目指そうというチームは助っ人選手と契約しています。

 会員さんがプレーするチームから、グランドスラムに出場する選手がいるチームまで、全てが同じ大きなクラブリーグに集まっています。日本にはない、おおらかで奥深いテニス文化を感じずにはいられません。

文●市川誠一郎

〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動スタート。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。

【PHOTO】ヨーロッパのテニス文化を象徴する「クラブリーグ」の情景集