試合時間に制限のないテニス競技であるが、にもかかわらず腕時計を装着したままプレーをする選手は少なくない。しかも、その多くが「高級」と呼ばれる腕時計を身に着けているという。果たしてトップ選手たちはどんな腕時計をしているのか。

　この疑問に応えたのが、腕時計の情報発信で有名な『Hodinkee』社のブランドエディター、ローガン・ベイカー氏だ。同氏は今年の全米オープン男子シングルスで優勝したカルロス・アルカラス（スペイン）や同女子優勝のイガ・シフィオンテク（ポーランド）、さらには引退表明をしたセレナ・ウィリアムズ（アメリカ）、冒頭でふれたナダルらの使用腕時計を解明し、その機種を明らかにしている。

　まず、19歳で全米オープンの頂点に立ち、史上最年少世界ランキング１位も確定させたアルカラス。彼が表彰式で装着していたというのは『ロレックス・デイトナ ref.116500』のようだ。自動車レースの聖地米国デイトナにちなんだスポーツモデルで速度計測を可能にするターキーメーターが装着されるクロノグラフだ。現在マイカーの購入を考えているアルカラスにとっては、ぴったりのモデルかもしれない。

　女子優勝のシフィオンテクのモデルもロレックス製でこちらは『レディデイトジャスト』のエバーローズゴールド。こちらは同社が生み出し、鋳造する特別なピンクゴールド合金が用いられていて、わずかに青みがかかった色調を持つのが特徴とされる。21歳の新女王シフィオンテクの若々しいイメージにマッチしている印象だ。
  　全米オープンを区切りに「進化」（引退とは言わない）することを宣言した元女王のセレナ・ウィリアムズ（アメリカ）。彼女の腕を飾ったのは『オーデマピケ　ロイヤル　オーク　オフショア』というモデル。スポーティーなスタイルながら、ベゼル（外周）部分には32個のダイヤが埋め込まれているスペシャルなモデル。さすがは元女王と見る者を唸らせるゴージャスな仕上がりだ。ちなみに全米でセレナが履いていたテニスシューズにもダイヤモンドがちりばめられていた。

　そしてグランドスラム通算22勝を誇るラファエル・ナダル（スペイン）の装着するのが『リシャール・ミル　RM27-04』である。ナダルを想定して作られた逸品の内部は、スチールのケーブルがラケットのストリングのように縦と横に張り巡らされ、そこにムーブメントが吊るされるように設置される。この構造によって1200G以上の加速度に耐えられるため、試合中の衝撃に対してもびくともしない。部品の一つひとつが特注品で構成されるため製造は50本限定。価格は日本円で約１億3000万円と超高額だ。

　テニス競技は試合時間に制限がないため、他のスポーツと比べて商品がメディアに露出される時間は長い。加えて、紳士淑女のスポーツとしてのイメージも良いため、様々な高級時計ブランドが選手と契約を交わしているという。成功者の証として好まれる高級腕時計だが、テニス界ではプロテニス選手としての強さの象徴でもあるようだ。

構成●スマッシュ編集部

【PHOTO】史上最年少の１位となった19歳アルカラスの全米オープン2022優勝までの激闘の記録