世界4位をネットの向こうに回し、彼女は、まったく物おじしていなかった。
「タフな試合だった」と振り返るが、6-3、6-2のスコアにも、コート上の堂々たるプレーからも、そんな気配は感じられない。
東レパンパシフィックオープン2回戦。今季急成長中の19歳のジェン・チンウェンが、大会第1シードのパウラ・バドサを圧倒した一戦である。
今季を159位で迎えた時から、中国の新鋭は、「自信はあった」とサラリと言う。2年前からスペインを拠点とし、ストロークから戦術面に至るまで、ベースを確実に築きあげてきた。
グランドスラム予選のスタートラインに立った時、彼女は「相手は全部自分より上の選手。勝ち上がっていくしかない」と闘志を高めたという。ちなみに、今の快進撃の起点となった全豪オープン予選決勝で、ジェン・チンウェンが破った相手が本玉真唯。どちらが勝ってもおかしくない、フルセットの熱戦だった。
その後は全仏オープンでシモナ・ハレップを破り、同大会4回戦では敗れはするも、世界1位のイガ・シフィオンテクからセットも奪う。まだトップ10からの勝利は無かったが、今大会でバドサに挑むにあたり「勝てると信じていた」のは、不思議なことではなかった。
その自信がコート上での、冷静なプレーにもつながっただろう。高い湿度のせいか「試合が進むにつれてボールが大きくなる感じで、球足が遅くなった」と振り返るが、ならばとばかりに、強打にアングルショットも織り交ぜ、相手にゆさぶりをかけた。長いラリーに先に根負けしたのは、いつもバドサの方。
マッチポイントが決まった時、バドサは苛立ち、ラケットをネット際に放り投げた。
勝者は淡々と歩みよると、ネットを越えてバドサのラケットを拾い、手渡しながら握手を交わす。その泰然自若とした姿にも、大物の風情が漂った。
現在のランキングは、36位。だがその数字以上のポテンシャルと魅力を放ちながら、今大会の台風の目は威力を強めている。
取材・文●内田暁
【PHOTO】全仏オープン2022で活躍したジェン・チンウェンら女子選手の厳選写真!
「タフな試合だった」と振り返るが、6-3、6-2のスコアにも、コート上の堂々たるプレーからも、そんな気配は感じられない。
東レパンパシフィックオープン2回戦。今季急成長中の19歳のジェン・チンウェンが、大会第1シードのパウラ・バドサを圧倒した一戦である。
今季を159位で迎えた時から、中国の新鋭は、「自信はあった」とサラリと言う。2年前からスペインを拠点とし、ストロークから戦術面に至るまで、ベースを確実に築きあげてきた。
グランドスラム予選のスタートラインに立った時、彼女は「相手は全部自分より上の選手。勝ち上がっていくしかない」と闘志を高めたという。ちなみに、今の快進撃の起点となった全豪オープン予選決勝で、ジェン・チンウェンが破った相手が本玉真唯。どちらが勝ってもおかしくない、フルセットの熱戦だった。
その後は全仏オープンでシモナ・ハレップを破り、同大会4回戦では敗れはするも、世界1位のイガ・シフィオンテクからセットも奪う。まだトップ10からの勝利は無かったが、今大会でバドサに挑むにあたり「勝てると信じていた」のは、不思議なことではなかった。
その自信がコート上での、冷静なプレーにもつながっただろう。高い湿度のせいか「試合が進むにつれてボールが大きくなる感じで、球足が遅くなった」と振り返るが、ならばとばかりに、強打にアングルショットも織り交ぜ、相手にゆさぶりをかけた。長いラリーに先に根負けしたのは、いつもバドサの方。
マッチポイントが決まった時、バドサは苛立ち、ラケットをネット際に放り投げた。
勝者は淡々と歩みよると、ネットを越えてバドサのラケットを拾い、手渡しながら握手を交わす。その泰然自若とした姿にも、大物の風情が漂った。
現在のランキングは、36位。だがその数字以上のポテンシャルと魅力を放ちながら、今大会の台風の目は威力を強めている。
取材・文●内田暁
【PHOTO】全仏オープン2022で活躍したジェン・チンウェンら女子選手の厳選写真!