試合立ち上がりの2ゲームでは、いずれも激しい打ち合いとデュースを重ね、ゲームポイントも手にした。
第2セットは序盤で0-4とリードを許したが、高い軌道のボールで相手を揺さぶり、自慢のフォアでウイナーを奪い追い上げた。
19日開催の「東レ パン パシフィック オープンテニス 」の1回戦で急成長中の19歳、36位のゼン・チンウェンに2-6,4-6と敗れるも、土居が最後まで勝利を模索し続けた事実は、第2セットのスコアにも映し出されていた。
今年4月に31歳を迎えた土居美咲は、この夏、8年師事したコーチのクリス・ザハルカと袂を分かっている。ザハルカとは2015年にツアー初優勝を成し遂げ、自己最高ランクの30位にも到達。一方で、300位台までランキングを落とした苦しい時期も共に過ごし、トップ100に返り咲く復活の道も歩んできた。
ただここ数年は、ランキング的には横這いで、今季は連敗のトンネルにも迷い込む。コーチとの離別は、そのような停滞感の中で下した決断だった。
「今までやってきたことと、自分がやりたいテニスを組み合わせて、自分なりに考えて取り組んでいる段階……という感じでしょうか」
土居がそう口にしたのは、ザハルカと別れて間もない8月のことだった。標榜するのは「フォアで攻める軸は変えず、前後の動きを取り入れたテニス」。
今大会のゼン・チンウェン戦では、強打に押され、なかなかネットは取れなかった。それでもベースラインから下がらず、高低織り交ぜた配球で相手を崩す意図は十分に見られた。
現時点での土居は、「次のコーチは探していません」と明言する。
「自分をちょっと信じてみようというか、自分のやりたいことを一旦やってみたいなという気持ちの方が強いので。今は自分の感覚だったり、考え方に耳を傾けながらやっていこうかと思っています」
もちろん、「何か月か経った後に、誰かに見て欲しいと思う時もあるかもしれない」と、あらゆる可能性にドアは空けている状態。それも含め、「焦ってもしょうがない。その時の自分の気持ちそのままに行動できればと思っています」と続けた。
独立独歩の道を選んだタイミングで、同期で友人の奈良くるみが引退を決めたのも、何かのめぐり合わせだろうか。
奈良から、今大会での引退を打ち明けられたその席で、「もしダブルスのパートナーが決まってないなら、一緒に組んで欲しい」とも頼まれたという。
「くるみとは、本当にジュニアの頃からずっと一緒にやってきた仲。自分が大変な時も、彼女が頑張っているから頑張ろうと思えたし、その逆もあったと思う。いい関係でやってこられた二人なのでいろんな思いもありますし、最後の試合をダブルスで一緒に戦えるうれしさもあります」
万感の想いを簡潔な言葉に込める彼女は、「本当に今は、楽しくプレーしたいと思っています」と笑った。
自分の感覚に耳を傾け、親友の花道を飾るべくコートに向かう土居は、何かを起こしそうな気配を放っている。
取材・文●内田暁
【PHOTO】土居美咲ら、世界で戦う日本人女子テニスプレーヤーたち!
第2セットは序盤で0-4とリードを許したが、高い軌道のボールで相手を揺さぶり、自慢のフォアでウイナーを奪い追い上げた。
19日開催の「東レ パン パシフィック オープンテニス 」の1回戦で急成長中の19歳、36位のゼン・チンウェンに2-6,4-6と敗れるも、土居が最後まで勝利を模索し続けた事実は、第2セットのスコアにも映し出されていた。
今年4月に31歳を迎えた土居美咲は、この夏、8年師事したコーチのクリス・ザハルカと袂を分かっている。ザハルカとは2015年にツアー初優勝を成し遂げ、自己最高ランクの30位にも到達。一方で、300位台までランキングを落とした苦しい時期も共に過ごし、トップ100に返り咲く復活の道も歩んできた。
ただここ数年は、ランキング的には横這いで、今季は連敗のトンネルにも迷い込む。コーチとの離別は、そのような停滞感の中で下した決断だった。
「今までやってきたことと、自分がやりたいテニスを組み合わせて、自分なりに考えて取り組んでいる段階……という感じでしょうか」
土居がそう口にしたのは、ザハルカと別れて間もない8月のことだった。標榜するのは「フォアで攻める軸は変えず、前後の動きを取り入れたテニス」。
今大会のゼン・チンウェン戦では、強打に押され、なかなかネットは取れなかった。それでもベースラインから下がらず、高低織り交ぜた配球で相手を崩す意図は十分に見られた。
現時点での土居は、「次のコーチは探していません」と明言する。
「自分をちょっと信じてみようというか、自分のやりたいことを一旦やってみたいなという気持ちの方が強いので。今は自分の感覚だったり、考え方に耳を傾けながらやっていこうかと思っています」
もちろん、「何か月か経った後に、誰かに見て欲しいと思う時もあるかもしれない」と、あらゆる可能性にドアは空けている状態。それも含め、「焦ってもしょうがない。その時の自分の気持ちそのままに行動できればと思っています」と続けた。
独立独歩の道を選んだタイミングで、同期で友人の奈良くるみが引退を決めたのも、何かのめぐり合わせだろうか。
奈良から、今大会での引退を打ち明けられたその席で、「もしダブルスのパートナーが決まってないなら、一緒に組んで欲しい」とも頼まれたという。
「くるみとは、本当にジュニアの頃からずっと一緒にやってきた仲。自分が大変な時も、彼女が頑張っているから頑張ろうと思えたし、その逆もあったと思う。いい関係でやってこられた二人なのでいろんな思いもありますし、最後の試合をダブルスで一緒に戦えるうれしさもあります」
万感の想いを簡潔な言葉に込める彼女は、「本当に今は、楽しくプレーしたいと思っています」と笑った。
自分の感覚に耳を傾け、親友の花道を飾るべくコートに向かう土居は、何かを起こしそうな気配を放っている。
取材・文●内田暁
【PHOTO】土居美咲ら、世界で戦う日本人女子テニスプレーヤーたち!