海外テニス

大物の風情漂う中国の19歳ジェン・チンウェン、世界4位撃破も「自信はあった」とサラリ<SMASH>

内田暁

2022.09.23

180センチ近い体格を駆使したパワフルなテニスで今季存在感を放つ19歳のジェン・チンウェンが東レPPOで世界4位を破った。写真|田中研治(本誌写真部)

 世界4位をネットの向こうに回し、彼女は、まったく物おじしていなかった。
「タフな試合だった」と振り返るが、6-3、6-2のスコアにも、コート上の堂々たるプレーからも、そんな気配は感じられない。

 東レパンパシフィックオープン2回戦。今季急成長中の19歳のジェン・チンウェンが、大会第1シードのパウラ・バドサを圧倒した一戦である。

 今季を159位で迎えた時から、中国の新鋭は、「自信はあった」とサラリと言う。2年前からスペインを拠点とし、ストロークから戦術面に至るまで、ベースを確実に築きあげてきた。

 グランドスラム予選のスタートラインに立った時、彼女は「相手は全部自分より上の選手。勝ち上がっていくしかない」と闘志を高めたという。ちなみに、今の快進撃の起点となった全豪オープン予選決勝で、ジェン・チンウェンが破った相手が本玉真唯。どちらが勝ってもおかしくない、フルセットの熱戦だった。
 
 その後は全仏オープンでシモナ・ハレップを破り、同大会4回戦では敗れはするも、世界1位のイガ・シフィオンテクからセットも奪う。まだトップ10からの勝利は無かったが、今大会でバドサに挑むにあたり「勝てると信じていた」のは、不思議なことではなかった。

 その自信がコート上での、冷静なプレーにもつながっただろう。高い湿度のせいか「試合が進むにつれてボールが大きくなる感じで、球足が遅くなった」と振り返るが、ならばとばかりに、強打にアングルショットも織り交ぜ、相手にゆさぶりをかけた。長いラリーに先に根負けしたのは、いつもバドサの方。

 マッチポイントが決まった時、バドサは苛立ち、ラケットをネット際に放り投げた。

 勝者は淡々と歩みよると、ネットを越えてバドサのラケットを拾い、手渡しながら握手を交わす。その泰然自若とした姿にも、大物の風情が漂った。

 現在のランキングは、36位。だがその数字以上のポテンシャルと魅力を放ちながら、今大会の台風の目は威力を強めている。

取材・文●内田暁

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