一つの時代が終わりを告げた。
現地時間9月23日、男子テニス団体戦「レーバー・カップ」(イギリス・ロンドン)はナイトセッション第2試合でダブルスが行なわれ、今大会での引退を表明したロジャー・フェデラー(スイス)が盟友のラファエル・ナダル(スペイン)とペアを組んで出場。フランシス・ティアフォー(アメリカ)/ジャック・ソック(アメリカ)との現役ラストマッチに臨み、約24年にもわたる輝かしいキャリアに幕を閉じた。
長らく右ヒザのケガに悩まされてきたフェデラーは、現地9月15日に更新した自身のSNSで今回のレーバー・カップを最後に現役を退くと正式に発表。開幕に先駆けた記者会見では「23日のダブルスがラストマッチになる」と公言し、同時に「最後はラファ(ナダル)とペアを組めたらとても素敵なことになるだろうね」と話していた。今回のダブルスはその希望が叶った形だ。
ひときわ大きな歓声と拍手で迎えられたフェデラー。「唯一無二の美しさ」と称される芸術的なプレーはやはり健在だった。四大大会決勝でも幾度となくコート上でしのぎを削ってきた永遠のライバルと共に、フェデラーは巧みなラケットタッチや流れるような美しいサービスで超満員の観客を魅了。時折笑顔も見せながら楽しそうにプレーをするフェデラーが起点となってポイントを奪うと、たちまち会場は興奮の渦に巻き込まれていく。この試合は一時フェデラー/ナダルがマッチポイントを握りながらも接戦の末に6-4、6-7(2)、[9-11]の逆転で敗戦。キャリア最後のポイントでソックと激しいラリーを繰り広げたフェデラーはその目に涙を浮かべていた。
「素晴らしい日になったし、本当にハッピーです。とても素晴らしい気分です。そして今日は楽しみました。自分にとってはすべての瞬間が最高でした。チームメイトも家族もいて、ストレスは感じませんでした。またケガをするのではないかという不安はあったけど、これ以上の幸せはありません」
現役最後の試合をそう振り返りながら気丈に振舞おうとしたフェデラーだったが、スピーチの終盤ではあふれ出る感情を抑えることができなかった。その中で数々の偉大な功績を残してきたレジェンドが繰り返したのは家族をはじめ支えてくれた人々への感謝の言葉だった。
「今日はラファと同じチームで戦って、エドバーグも来てくれた。ありがとう。僕は孤独を感じたくなかった。チームメイトと一緒にいたかった。彼らとみんなと世界を周ってきた。アンディ(マリー)やノバク(ジョコビッチ)、ステファノス(チチパス)…みんなありがとう。素敵な仲間です。彼らと一緒にこのレーバー・カップを戦ってきました」
「本当にこの旅は楽しかったです。また何回でもその旅を繰り返したいと思っています。たくさんの人が応援してくれて、感謝の気持ちしかありません。お父さんお母さん、本当にありがとう。感謝する人が多すぎて…皆さんには感謝の言葉しかありません。本当に素晴らしい旅でした」
スピーチを終えてからも嗚咽が止まらなかったフェデラー。「もっと早くに僕を引退させてもよかったのに、僕にずっとプレーをさせてくれた」という妻のミルカ・フェデラーさんや4人の子どもたちと熱いハグを交わし、最後は声援を送ってくれた観客へ手を挙げながら歩いてコートを一周した。
世界中のファンが涙したフェデラーの“ラストダンス”。延べ1500以上に及ぶ試合を戦い抜いた中で築き上げてきた栄光の歴史はこの先もずっと語り継がれるだろう。
文●中村光佑
【PHOTO】あの名シーンも!史上屈指のライバル、フェデラー&ナダルの"若かりし頃"ギャラリー
現地時間9月23日、男子テニス団体戦「レーバー・カップ」(イギリス・ロンドン)はナイトセッション第2試合でダブルスが行なわれ、今大会での引退を表明したロジャー・フェデラー(スイス)が盟友のラファエル・ナダル(スペイン)とペアを組んで出場。フランシス・ティアフォー(アメリカ)/ジャック・ソック(アメリカ)との現役ラストマッチに臨み、約24年にもわたる輝かしいキャリアに幕を閉じた。
長らく右ヒザのケガに悩まされてきたフェデラーは、現地9月15日に更新した自身のSNSで今回のレーバー・カップを最後に現役を退くと正式に発表。開幕に先駆けた記者会見では「23日のダブルスがラストマッチになる」と公言し、同時に「最後はラファ(ナダル)とペアを組めたらとても素敵なことになるだろうね」と話していた。今回のダブルスはその希望が叶った形だ。
ひときわ大きな歓声と拍手で迎えられたフェデラー。「唯一無二の美しさ」と称される芸術的なプレーはやはり健在だった。四大大会決勝でも幾度となくコート上でしのぎを削ってきた永遠のライバルと共に、フェデラーは巧みなラケットタッチや流れるような美しいサービスで超満員の観客を魅了。時折笑顔も見せながら楽しそうにプレーをするフェデラーが起点となってポイントを奪うと、たちまち会場は興奮の渦に巻き込まれていく。この試合は一時フェデラー/ナダルがマッチポイントを握りながらも接戦の末に6-4、6-7(2)、[9-11]の逆転で敗戦。キャリア最後のポイントでソックと激しいラリーを繰り広げたフェデラーはその目に涙を浮かべていた。
「素晴らしい日になったし、本当にハッピーです。とても素晴らしい気分です。そして今日は楽しみました。自分にとってはすべての瞬間が最高でした。チームメイトも家族もいて、ストレスは感じませんでした。またケガをするのではないかという不安はあったけど、これ以上の幸せはありません」
現役最後の試合をそう振り返りながら気丈に振舞おうとしたフェデラーだったが、スピーチの終盤ではあふれ出る感情を抑えることができなかった。その中で数々の偉大な功績を残してきたレジェンドが繰り返したのは家族をはじめ支えてくれた人々への感謝の言葉だった。
「今日はラファと同じチームで戦って、エドバーグも来てくれた。ありがとう。僕は孤独を感じたくなかった。チームメイトと一緒にいたかった。彼らとみんなと世界を周ってきた。アンディ(マリー)やノバク(ジョコビッチ)、ステファノス(チチパス)…みんなありがとう。素敵な仲間です。彼らと一緒にこのレーバー・カップを戦ってきました」
「本当にこの旅は楽しかったです。また何回でもその旅を繰り返したいと思っています。たくさんの人が応援してくれて、感謝の気持ちしかありません。お父さんお母さん、本当にありがとう。感謝する人が多すぎて…皆さんには感謝の言葉しかありません。本当に素晴らしい旅でした」
スピーチを終えてからも嗚咽が止まらなかったフェデラー。「もっと早くに僕を引退させてもよかったのに、僕にずっとプレーをさせてくれた」という妻のミルカ・フェデラーさんや4人の子どもたちと熱いハグを交わし、最後は声援を送ってくれた観客へ手を挙げながら歩いてコートを一周した。
世界中のファンが涙したフェデラーの“ラストダンス”。延べ1500以上に及ぶ試合を戦い抜いた中で築き上げてきた栄光の歴史はこの先もずっと語り継がれるだろう。
文●中村光佑
【PHOTO】あの名シーンも!史上屈指のライバル、フェデラー&ナダルの"若かりし頃"ギャラリー