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国内テニス

【伊達公子】日本の大会は「静か」。テニス観戦では選手の心情に寄り添う応援と、試合の一部になる楽しさを<SMASH>

伊達公子

2022.09.30

会場の雰囲気にメリハリが出る方が「選手のモチベーションが上がってプレーできる」と言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

会場の雰囲気にメリハリが出る方が「選手のモチベーションが上がってプレーできる」と言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 東レPPOテニスは現地で観戦しましたか? 来週には楽天オープンがあるので、今回は観客の観戦について書きたいと思います。

 日本のテニス大会の印象は「静か」です。だから子どもが泣いたり、物を落としただけですごく目立ちます。プレー中はもちろん静かであるべきですが、ポイント間はもっとザワザワ感がほしいところです。声援であったり友人と感想を言い合ったり雑談でもいいんです。

 実はその方が会場内の雰囲気にメリハリが出て選手のモチベーションが上がってプレーできます。ずーっと静かだと、張り詰めた空気がコート内に流れて、プレーする方も重い空気になってしまいがちです。

 私がオススメする観戦方法は、選手の心情に寄り添う応援です。試合中は選手に波がありますし、その日の調子もあります。テニスをよく見ている人なら、その選手の状況もある程度把握できるでしょう。選手を盛り上げた方がいい時にこそ、声援や拍手で後押ししようという気持ちでいて欲しいと思います。

 例えば全米オープン女子決勝で、ジャバーは思うようなプレーができていませんでした。観客は本来の彼女のプレーはこんなものではないと知っているので、ジャバーを盛り立てようと、少しでも良いポイントがあった時には大きな反応をしていました。

 これが日本の場合だと、選手が不調の時は静かになり重い空気がのしかかってくるため、選手は自分自身でどうにかするしかありません。選手の好不調の状態を把握しながら、選手の調子が上がるような応援ができると、観客を含めた会場全体でテニスというエンターテインメントを作り上げられるようになります。
 
 テニスに限らず日本人の特性として、良い時にさらに盛り立てるわけではなく、失敗した時は大きくガッカリするというネガティブな感情に大きく反応する傾向があります。私が試合中に観客のため息が気になったのは、そういう時です。

 では世界中の会場でガッカリすることがないのかといえば、そんなことはありません。しかし、選手の心情に寄り添っている観客が多いと、ガッカリしたすぐ後に盛り立てようという応援になります。そういう雰囲気が伝わって選手が気持ちの切り替えをしやすくなることも結構あるのです。

 日本の観客は両選手に対してフェアだということも特徴として挙げられます。選手に寄り添う観戦の仕方をすると、フェアな状態にならない場合もありますが、それでいいと思います。

 例えば東レPPO予選での奈良くるみ選手の引退試合。逆転負けとなりましたが、今年は大きな声を出すことができませんでしたが、もし観客がすごい熱量で彼女を応援したら、ミラクルが起きていたかもしれません。私が伝えたいのは、テニスのプレーを見るだけでなく、試合の一部になるような観戦もしてほしいということです。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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