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ダブルスの名手ジェイミー・マリーの独特なボレーの感覚を参考に自分スタイルを構築 ~上杉海斗【プロが憧れたプロ|第28回】<SMASH>

赤松恵珠子(スマッシュ編集部)

2022.10.17

以前に楽天オープンで来日したジェイミー・マリーと打てたことが1番うれしかったという上杉海斗(写真左下)。写真: THE DIGEST写真部、Getty Images

 現在、プロとして活躍している選手も、現役を引退してコーチをしている人も、小さい頃には憧れのプロがいたはずだ。【プロが憧れたプロ】シリーズの第28回は、今シーズンにITFの8大会にダブルスで優勝している上杉海斗選手。

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 2021年全日本選手権の男子ダブルスで松井俊英と組んで優勝している上杉。ダブルスでの活躍が目立つだけに、参考にした選手もダブルスの元世界1位であるジェイミー・マリー(イギリス)だ。

「タッチがすごく好きです。普通、ボレーはセオリー通りラケットを立ててコンパクトにスイングしますが、ジェイミー・マリーは完全に横ぶりのスタイルで、それが好きです」と、特殊な部分に魅かれたそうだ。というのも、上杉自身も学生時代は横ぶりで、徐々に直していったと言う。

 以前の自分と類似点があるフォームで、世界トップになれるだけのボレー技術を持つマリーについて「あの感覚はすごい」と上杉。一時はマネをしてフォアボレーを打った時もあり、「その感覚のまま、自分のスタイルに持っていきました」と、自分のボレーのスタイルを構築していった。
 
 そんなジェイミー・マリーと1度だけ打てたことがある。2018年楽天オープンに西岡良仁とのダブルスでワイルドカードを貰い出場、大会の最終日までヒッティングパートナーとして会場に残っていた時だ。「コートに行くまで知らなくて、行ったらジェイミー・マリーとで、練習できて1番うれしかったです」

「練習して、間近でボレーを見られました。その時、自分のボレーの調子がすごくよかったです」と、感覚的な部分を打ち合うことで感じ取れたのかもしれない。

 大会でヒッティングパートナーの経験ができたことは、上杉にとって大きな意味があり、「上の選手のレベルを知らない状態で上を目指すのは結構難しいと思います。でも、トップ選手と一緒に練習して、球質などを知れたことが良かったです」と、決勝前には、錦織圭とダニール・メドベージェフのヒッティングも務めた上杉は言う。

 ケガで大会に出場できない時期も続いていたが、今シーズンの活躍は目覚ましい。感覚を大事にして、自分のスタイルをつかんだボレーを生かして、日本のダブルスを牽引する存在になってほしい。

取材・文●赤松恵珠子(スマッシュ編集部)
取材協力●みらいカップ2021

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