25歳でテニスを始め、32歳でプロになった市川誠一郎選手は、夢を追って海外のITF大会に挑み続ける。雑草プレーヤーが知られざる下部ツアーの実情を綴る転戦記。
* * *
今回は僕が毎週フューチャーズ大会(※ITFツアーの賞金総額1.5万ドル、2.5万ドルの大会。「フューチャーズ」は旧称で、習慣的に今もそう呼ぶ選手がいる)に出場し、多くの選手と話してきて感じたことを紹介します。
男子のITFツアーは2.5万ドル以下の大会であり、国際プロツアーといえど一番低いカテゴリーで、ここに出場している選手は基本的に賞金だけでは食べていけません。日本選手はスポンサー環境にとても恵まれており、外国人でもコネクションがある一部の選手は契約金をもらったり、ヨーロッパ各国のリーグに出場して多少の収入を得たりしますが、その他大勢は依然として親の資金を頼って選手活動をしています。
ITFツアーに出場しているのは、世界のトップジュニアやそれを卒業した選手、大学を卒業した選手、そしてずっとITFツアーでプレーしている選手です。グランドスラムに優勝するような選手は、16歳くらいでITFツアーを制してしまい、すぐにその上のカテゴリーであるチャレンジャーやATPツアーに出場していきます。
ITFツアーに長く留まるということは、ある意味、世界のトップを目指すには落ちこぼれを意味します。
もちろん選手のキャリアの歩み方は様々で、トップ100になるような選手でもITFツアーから上がるのに数年かかるケースもありますが、大抵は早くチャレンジャー大会に出場できるランキングに辿りつけないと、その先はありません。
チャレンジャーに出るには、かなり高いランキングが必要です。特にジュニアや卒業して間もない選手は、世界のエリートジュニアとして突っ走ってきた自信があり、大会側からワイルドカードなどをもらえる"チャンス期間"で結果を出さないと、ITFツアーといえど抜け出すのは大変です。
その理由として、ITFツアーとチャレンジャーで獲得できるポイントには大きな格差があることが挙げられます。両者のポイントはざっくり言って"10倍"くらい違うのです。
そのためいったんチャレンジャーに出られるランキングになった選手は、比較的そのステージに留まりやすく、ITFツアーに出場している選手はよほど勝ちまくらないと、そこで得られるポイントではチャレンジャーレベルまで上げるのは困難です。テニスのランキングシステムは入れ替わりがしづらい、少々保守的な構造をしています。
ITFツアー本戦以上のレベルになれば実力差は減り、毎回勝ち上がるのも非常に大変です。実際チャンレンジャーに出場している選手がITFツアーに降りてきて1回戦負けすることもあります。実力差自体はそれほど大きくはないのですが、ITFツアーの選手はチャンレンジャーにトライできるチャンスが少ないのが実情です。
では、どういう選手がチャレンジャーに這い上がっていくのでしょう? それについては次回述べたいと思います。
文●市川誠一郎
〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動スタート。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。
【PHOTO】雑草プロの世界転戦記・チュニジアのITFツアーはこんなところ!
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今回は僕が毎週フューチャーズ大会(※ITFツアーの賞金総額1.5万ドル、2.5万ドルの大会。「フューチャーズ」は旧称で、習慣的に今もそう呼ぶ選手がいる)に出場し、多くの選手と話してきて感じたことを紹介します。
男子のITFツアーは2.5万ドル以下の大会であり、国際プロツアーといえど一番低いカテゴリーで、ここに出場している選手は基本的に賞金だけでは食べていけません。日本選手はスポンサー環境にとても恵まれており、外国人でもコネクションがある一部の選手は契約金をもらったり、ヨーロッパ各国のリーグに出場して多少の収入を得たりしますが、その他大勢は依然として親の資金を頼って選手活動をしています。
ITFツアーに出場しているのは、世界のトップジュニアやそれを卒業した選手、大学を卒業した選手、そしてずっとITFツアーでプレーしている選手です。グランドスラムに優勝するような選手は、16歳くらいでITFツアーを制してしまい、すぐにその上のカテゴリーであるチャレンジャーやATPツアーに出場していきます。
ITFツアーに長く留まるということは、ある意味、世界のトップを目指すには落ちこぼれを意味します。
もちろん選手のキャリアの歩み方は様々で、トップ100になるような選手でもITFツアーから上がるのに数年かかるケースもありますが、大抵は早くチャレンジャー大会に出場できるランキングに辿りつけないと、その先はありません。
チャレンジャーに出るには、かなり高いランキングが必要です。特にジュニアや卒業して間もない選手は、世界のエリートジュニアとして突っ走ってきた自信があり、大会側からワイルドカードなどをもらえる"チャンス期間"で結果を出さないと、ITFツアーといえど抜け出すのは大変です。
その理由として、ITFツアーとチャレンジャーで獲得できるポイントには大きな格差があることが挙げられます。両者のポイントはざっくり言って"10倍"くらい違うのです。
そのためいったんチャレンジャーに出られるランキングになった選手は、比較的そのステージに留まりやすく、ITFツアーに出場している選手はよほど勝ちまくらないと、そこで得られるポイントではチャレンジャーレベルまで上げるのは困難です。テニスのランキングシステムは入れ替わりがしづらい、少々保守的な構造をしています。
ITFツアー本戦以上のレベルになれば実力差は減り、毎回勝ち上がるのも非常に大変です。実際チャンレンジャーに出場している選手がITFツアーに降りてきて1回戦負けすることもあります。実力差自体はそれほど大きくはないのですが、ITFツアーの選手はチャンレンジャーにトライできるチャンスが少ないのが実情です。
では、どういう選手がチャレンジャーに這い上がっていくのでしょう? それについては次回述べたいと思います。
文●市川誠一郎
〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動スタート。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。
【PHOTO】雑草プロの世界転戦記・チュニジアのITFツアーはこんなところ!
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