海外テニス

【プロの観戦眼25】ズベレフのボールスピードを出しながら打つ角度の付いたショットを見よ!~寺地貴弘<SMASH>

赤松恵珠子(スマッシュ編集部)

2022.12.06

ズベレフは198センチという長身の利点を存分に生かしていると言う寺地貴弘プロ(写真左下)。写真:Getty Images、田中研治(THE DIGEST 写真部)

 このシリーズでは、多くのテニスの試合を見ているプロや解説者に、「この選手のここがすごい」という着眼点を教えてもらう。試合観戦をより楽しむためのヒントにしてほしい。

 第25回は、鋭い両手バックハンドを武器にしていた寺地貴弘プロ。注目しているのは、ストローカーで両手バックハンドのアレクサンダー・ズベレフだ。

 ズベレフで注目したいのはフォアとバック共に「角度が付いたショットを打って、相手をコート外に追い出せる点」だと言う。プロならば、スピンをかけてショートクロスに打つことはできて当然だ。しかし、ズベレフは「上背(198センチ)があり、スイングをコンパクトにして打てるので、ボールスピードを出しながら、浅いクロスに打てるんです」と、他の選手との違いを挙げた。

 ストローク戦で強いのは、「フォームがシンプルで、打点が変わることなく、身体のバランスを崩して打つことも少ない。常に同じ打ち方ができる」ためだと言う。また、ストロークの威力は男子テニス界でもトップで、「長身で手足が長く、遠心力を使ったフォームで打てます。細身に見えますがパワー負けしません」
 
 その強力なストロークは、全米オープン覇者のホアン・マルティン・デルポトロに近いものがあると言う。「フラット系で突き刺すようなボールが打てます。回転系のボールでじわじわとラリーを有利に進めるのではなく、1球で相手を崩せる選手というのはそういません」

 2022年全仏オープン準決勝で初めての大きな故障を経験したズベレフは、今月にエキジビションでの復帰が予定されている。「ケガからの復帰は難しいですが、ケガをする前と同じレベルでプレーできるなら、グランドスラムは取れると思います」

 10代の頃から次世代の王者候補と言われ続けてきたズベレフも25歳。才能は誰もが認めるだけに、グランドスラム優勝、そして世界1位へと昇り詰める姿を見たいものだ。

◆Alexander Zverev/アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)
1997年4月20日、ドイツ生まれ、モナコ在住。198センチ、90キロ、右利き、両手BH。19歳でツアー初優勝し、20歳でマスターズを含む5大会で優勝して3位にランクイン。20年全米オープン準優勝。21年東京五輪金メダル。両親は元テニス選手で、父親は現在のコーチ。兄ミーシャもテニス選手。キャリアハイは2位(2022年6月13日付)

取材・文●赤松恵珠子(スマッシュ編集部)

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