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海外テニス

【プロの観戦眼24】テイクバックが“身体の前面”に収まるラドゥカヌのフォアハンドを見よ!~石井弥起<SMASH>

渡辺隆康(スマッシュ編集部)

2022.11.30

正面から見たラドゥカヌのフォアハンド。女子選手には珍しく、テイクバックでラケットが胸側にあるため、振り遅れにくい。左下は石井弥起プロ。写真:真野博正、田中研治

正面から見たラドゥカヌのフォアハンド。女子選手には珍しく、テイクバックでラケットが胸側にあるため、振り遅れにくい。左下は石井弥起プロ。写真:真野博正、田中研治

 このシリーズでは、多くのテニスの試合を見ているプロや解説者に、「この選手のここがすごい」という着眼点を教えてもらう。試合観戦をより楽しむためのヒントにしてほしい。第24回は、元デビスカップ日本代表で、WOWOWのグランドスラム解説者として世界のテニスをつぶさに見ている石井弥起プロに話を聞いた。

 早稲田大学で男女庭球部の監督を務める石井プロは、それに加えて「最近は娘がテニスをしていることもあり、女子もよく見るんです」と言う。彼の長女・心菜さんは2021年の全国小学生チャンピオン。そんな石井プロが注目するのは、昨年の全米オープン女王であるエマ・ラドゥカヌ(イギリス)のフォアハンドだ。

「ラドゥカヌのフォアは準備がいいんです。スタンスが広く、腕の引き方も理に適っています」と石井プロ。どういうことか?

「女子選手は力がないぶん、フォアのテイクバックがどうしても背中の方に行きがちです。正面から見ると、ラケットが背中側に出てしまいます。でもラドゥカヌは胸側にテイクバックが収まっている。動きが身体の前面だけで推移するんです」

 確かに掲載した連続写真を見ても、ラドゥカヌのラケットは常に胸側にある。そうすることでどんなメリットがあるのだろうか?
 
「振り遅れずにラケットが出てくるので、いい打点で打てて、コントロールが利きます。また、腕力頼みではなく、きちんと身体のひねりを使ってスイングするため、パワーを生みやすいのも利点です」

 石井プロによれば、「男子はこの引き方でないとラリーについていけないから、みんなちゃんとできている。でも女子はなかなかできないんです」とのこと。「力がない中でスピード勝負しようとするため、後ろが大きくなってしまう」そうで、結果的にスイングが遠回りして、振り遅れにつながるという。

 今度テレビ中継でラドゥカヌのフォアを正面から見る機会があったら、テイクバックのラケットの位置をチェックしてみよう。そして「特に女子のジュニアなどはぜひお手本にすべき」という石井プロのアドバイスを思い出してほしい。

◆Emma Raducanu/エマ・ラドゥカヌ(イギリス)
2002年11月13日、カナダ・トロント生まれ。175cm、右利き、両手BH。初めてグランドスラムの本戦に出場した2021年ウインブルドンで4回戦に進み、脚光を浴びると、続く全米オープンでは予選から優勝を果たし、世界の度肝を抜いた。ベースラインからの思い切りの良い強打が持ち味。WTAランキング自己最高10位(2022年7月11日付)。

取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)

【30コマの超連続写真】テイクバックが身体の前面に収まっているラドゥカヌのフォアハンド
 

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