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ロシア・ベラルーシ選手除外で英テニス協会に100万ドルの罰金!ATP決定に「理解が欠如している」と反発<SMASH>

中村光佑

2022.12.09

英テニス協会による今夏のロシア・ベラルーシ除外に対してATP(男子プロテニス協会)が罰金を科した(写真はウインブルドン)。(C)Getty Images

 イギリス国内で芝コートのツアー大会を運営するイギリス・ローンテニス協会(以下LTA)が、ロシア・ベラルーシ国籍の選手の大会出場を禁止したために、ATP(男子プロテニス協会)から100万ドル(約1億3700万円)もの罰金を科されていた。テニス系海外メディア『UBITENNIS』が報じている。

 今年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻を受け、LTAは英国政府の勧告の下、今夏芝コートで行なわれた計5つのトーナメント(うち3つは下部大会)でロシアとベラルーシの選手に出場禁止を通告。それに追随する形でテニス四大大会ウインブルドンを主催するオールイングランド・ローンテニス&クローケークラブ(以下AETLC)も今年7月に行なわれた同大会で2国の選手の締め出しを遂行した。

 ところがこれがATPとWTAで定める「全ての国の選手を平等に大会へ参加させる」という基本原則に反しているとして、両団体は共同で今年度のウインブルドンにおけるランキングポイント付与停止と昨年大会で得たポイントの失効を決定。これにより男子シングルスで大会4連覇を含む7度目の優勝を飾ったノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、大会終了直後に更新された世界ランキングで2000ポイントを失い、3位から7位への後退を余儀なくされた。

 実はWTAが今年7月の段階でロシア・ベラルーシ選手の大会参加を認めなかったLTAへ25万ドル(約3400万円)、AETLCには75万ドル(約1億200万円)の罰金を科していたのだが、このほどATPも同様の制裁を加える意向を表明した。さらにATPはLTAが来シーズンも両国の選手の出場禁止措置を講じた場合、「大会の運営権をはく奪する」とも通知している。
 
 これを受けてLTAは現地12月7日に公式声明文を発表。ATPの決定に不快感をあらわにした。

「LTAは深く失望している。ATPはロシアのウクライナ侵攻によって生み出された例外的な状況、または国際スポーツコミュニティとその侵略に対する英国政府の対応を認識できていない。ATPは一連の問題を単なる規約違反としか見ていないようで、ウクライナの状況に対する配慮と、LTAが直面している特殊な状況に対する理解が欠如している」

 これに続いて英文化相のミシェル・ドネラン氏もLTAの意見に賛同の意を示し、以下のようなコメントを発表した。

「英国はこの国際的な対応を構築するために世界をリードする役割を果たしてきた。この致命的な侵攻を正当化するためにスポーツを利用することはできず、ロシアとベラルーシを代表するアスリートは他の国での競技を禁止されるべきであることは明らかだ。ATP と WTA による誤った動きが展開されている。私は彼らに、彼らが発するメッセージについて慎重に考え、再考することを強く勧めたい」

 だがスペインのテニス専門メディア『Punto de Break』の報道によると、すでにAETLCはATPやWTAからのさらなる制裁を回避するため、来年のウインブルドンではロシア・ベラルーシ人選手の出場禁止措置を解除する方向で検討しているという。またLTAも来年春までには管轄するツアー大会でどのように対応するのかを決めなければならない。

文●中村光佑

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