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「僕は嫌いだ。レガシーを汚す」19歳の俊英ルネがテニス界ビッグ3の“GOAT論”に違和感「どんな記録も破られるためにある」<SMASH>

中村光佑

2022.12.27

今後の活躍に大きな期待を寄せられているルネ。この俊英がテニス界の重鎮たちに対する持論を展開した。(C)Getty Images

 長年にわたって世界のトップをひた走り、それぞれが四大大会で20勝以上を誇るロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル、ノバク・ジョコビッチ。男子テニス界の「ビッグ3」と称される彼らは、絶大なカリスマ性も兼ね備え、テニスファンや有識者を賑わせてきたのが、3人のなかで誰が史上最高の選手なのかを決める「GOAT(Greatest of All Time)論」だ。
 
 現段階でのグランドスラム優勝回数は、今年9月に現役を引退したフェデラーが20回、ジョコビッチが21回、そしてナダルが男子テニス史上最多の22回となっている。だが、ビッグ3はGS(グランドスラム)優勝以外にも数々の輝かしい功績を残しているため、GOAT論に終止符を打つのは非現実的と言っても過言ではない。
 
 先月初旬に出場した「ロレックス・パリ・マスターズ」(ATP1000)でキャリア初のマスターズ大会優勝を飾り、今後のさらなる活躍に大きな期待を寄せられている19歳のホルガー・ルネ(デンマーク/世界ランク11位)はそう考えるうちの1人である。
 
 イギリスのニュースメディア『Express』のインタビューでGOAT論について言及したルネは、「それについては特に何も考えていない。僕はその論争が嫌いだ」とバッサリ。その真意については次のように説明している。
 
 「どのプレーヤーが一番多く勝ったとか、何かを達成したとか、そういう話や議論は、どんな記録も破られるためにあることをはっきりさせることに加え、彼ら(ビッグ3)のレガシー(遺産)を汚すだけだと思う」
 
「誰が一番多くのタイトルを獲得したか、誰が一番グランドスラムを勝ったか、誰が一番長くナンバーワンになったとか、終わりが見えない。僕は、彼らはみんな信じられない選手だと思う。彼らは歴史的な偉業を成し遂げた」
 
 続けてルネは「彼らがやってきたことが、他の若い選手たちに可能性があると信じさせてくれる。記録は破られるためにあり、その記録を破るためには努力せざるを得ない。それはテニスの将来にとって良いことだ。レベルがもっと上がっていくだろう」とコメント。改めてビッグ3の存在意義の大きさを強調した。
 
 さらにはビッグ3と肩を並べ、GSで3度の優勝を経験しているアンディ・マリー(イギリス/現世界49位)も大いに称賛されるべきと主張するルネは「フェデラー、ナダル、ジョコビッチ、そしてマリーのような人たちは、テニスの極限のレベルを示してくれたと思うし、彼らの存在こそが今日の若い世代が高いレベルを維持できている理由の1つだと思う。彼らがまだプレーを続けていることがうれしい。彼らが本当に高いハードルを設定したことは間違いないからね」と語った。
 
 最後には、今もなお第一線で輝くジョコビッチ、ナダル、マリーの3人に対して、「グランドスラムで戦ってみたい」と野心をのぞかせたルネ。来季も引き続き19歳のヤングスターがどんなパフォーマンスを見せてくれるのか注目したい。
 
文●中村光佑

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