海外テニス

【全豪オープンテニス】「あえてイライラした」西岡良仁が3回戦進出!綿貫陽介とダニエル太郎は敗れるも「手応え」<SMASH>

内田暁

2023.01.19

西岡良仁(中)は快勝し3回戦へ。綿貫陽介(左)とダニエル太郎(右)シード選手に敗退した。(C)Getty Images

「これは、普通にやったら自分が負けるパターンは、あまりないな……」

 試合が始まる前の、ウォームアップ。ダリボル・スブルチナのボールを受けた時、西岡良仁は、そう感じたという。

 試合に入る前には、色々なことを考えもした。

 自身は今大会31シードで、相手は予選あがり。対戦も練習もしたことがなく、球質などは実際に打つまでわからなかった。

 さらに、3回戦で当たると思っていたラファエル・ナダルが敗れる姿も、試合前にモニターで見た。

 しかもナダルに勝った相手は、西岡が過去3勝1敗と勝ち越す、マッケンジー・マクドナルド。

「ここで勝てば、4回戦に行けるチャンスが広がる」

 そんな緊張感を覚えながら、向かった2回戦のコートだった。

 しかし実際に打ち合った時、前述したように、自分の負ける要素が少ないと西岡は直感する。サービスがやや読みにくいが、いわゆる"ビッグウェポン"のある選手ではない。それも踏まえ、ウォームアップの時点で西岡の頭脳は、素早くいくつかの"ありえる試合展開"をはじき出した。

「彼に押されるパターンは、ほぼない。負けるパターンがあるとすれば、自分が崩れること。そこさえしなければ、多分負けることはない。最悪、苦しくなれば粘りまくれば何とかなる」

 そこまで戦略を整理した時、「気持ちの余裕が生まれた」という。
 
 各セットの立ち上がりで、すべて最初の相手サービスをブレークしたのは、それら明瞭な分析が大きいだろう。加えるなら、「ニューボールの時は球がのびるので、僕は積極的にプレーができた」ことも要因だ。

 唯一、西岡の心が乱れたように見えたのが、第2セットの中盤。ミスに叫び声をあげ、自身を叱咤するように言葉を吐いた。

 ところが、後に本人が明かしたこの時の"内面の真相"は、なんとも興味深いものである。

「去年の中頃ぐらいから、いわゆる"イライラすること"が自分にとって良くないのか、良いことなのか、いろいろ考えてきた。今日みたいに、それこそスタートの時点で自分の負けパターンがほぼなないとわかった時に、気が抜けてくるのがすごく嫌だったんですよ」

 その前提を踏まえて、さらに続ける。

「個人的には、僕は結構イライラしてる時の方が、集中ができる。今日は、もう勝てるだろうなと思ったんですが、そうなると、微妙に何か良くない。意味わからんことをやり出さないように、あえて自分でイライラしようとしました」

 イライラ……という言葉が、どのような表精神状態を指すのかは、本人だけの感覚でもあり解釈が難しいところだろう。

 ただそれが、闘争心が高まり試合に向かっていく状態であるのは、想像ができる。

「ちゃんと、試合を早く終わらせるために」。そこまで自分を駆り立てた理由を、彼はそう言った。しっかりと3セットで締めくくり、次に備える——西岡がこの試合で自分に課したのは、単なる勝利ではなかった。
 
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西岡が思い描く3回戦の青写真とは